2023 年 28 巻 3 号 p. 3_26-3_31
東日本大震災から12年が経過しようとしているが、福島第一原子力発電所の事故に巻き込まれた人々の多くと自治体は今なお模索している。旧避難指示区域と帰宅困難区域の自治体の人口統計、「住民意向調査」への回答、学校の統合と生徒数の推移には、避難先で新たに築いた生活拠点に留まるか帰還するかという避難者の葛藤が表れている。また、自治体の存続と将来設計に向けて住民をつなぎとめ、帰還を呼びかけ、新たな転入者の定住を図ろうとする自治体・県・国の取り組みの影響が表れている。本稿では、上記の統計と情報を基に、原発事故被災地区の住民と自治体の現状と課題──住民登録人口の減少、住民登録人口と居住者数の乖離、住民登録のない居住者が過半数を占める自治体、避難者のとらえ方の違い、住民の帰還意向の変化、帰還を決めた理由と帰還しない理由の変化、高齢層の帰還・帰還希望と世帯分離、子どもたちの環境を整える努力──を検討する。