2013年および2014年に行った東日本大震災の復興政策に関する二つの提言は、被災当事者を含むモニタリングとフィードバック回路の要請を行うものだった。提言から十年を経て振りかえると、この提言は十分に生かされず、懸念されていたコミュニティ再生の困難さが現実のものとなっている。それどころか一度採用された決定が、被災者・避難者という当事者の声に耳を貸さずに遮二無二にただ進み、巨大防潮堤/高台移転ありきの復興事業や、早期帰還のみを目的とした帰還政策によってコミュニティの回復が阻害された可能性がある。我が国の災害復興の政策形成過程に、PDCAサイクルを実現するための、モニタリングとフィードバック機構を取り付ける必要がある。科学・学術の協力と貢献なしに適正な政策は成り立たず、政治と学術間、また諸科学間の協働関係を確立し、国民の暮らしにとって意義のある現状分析と公論の場が提供されることが望ましい。