学術の動向
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28 巻, 3 号
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特集
東日本大震災の復興をめぐる社会的モニタリングの方法と課題
第一部:これまでの復興/復興施策をめぐる専門知に関する議論の系譜:社会的モニタリングに向けた議論の到達点と方法・課題の提示
  • 吉原 直樹
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_16-3_20
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     震災直後に出現した復興にかかわる二つのナラティヴ、すなわち「ショック・ドクトリン」というナラティヴと「災害ユートピア」というナラティヴは鋭く対立しているようにみえながら、新自由主義的な復興論議の下でひとつのナラティヴに一体化している。そうしたナラティヴはそもそも黙示録としてあり、そこに系を異にするもうひとつのナラティヴが見え隠れしている。そして二つのナラティヴが相克するなかで、それらの「あいだ」でさまざまなナレッジが立ちあらわれている。それらは非対称的に布置しているが、それらのなかから復興を「プロセス」としてとらえつつ、軸線を「パブリック」から「コモン」へと移し、人びとの「生存の知」へと組み直そうとするものが立ちあらわれている。

  • ──復興過程の検証と再帰的ガバナンス
    青柳 みどり
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_21-3_25
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     震災以降既に12年余が経過した今、津波災害、原発災害などの個別のイッシューを越えて「震災被災者の主体的な復興」をキーワードに震災復興を振り返る必要がある。ここでは「社会的モニタリング」の実施とそのアーカイブ化を通じた「被災者の主体的な復興」のプロセスを検証する一連の手続きを提案する。「社会的モニタリング」とは復興ガバナンスを進展させていくための基本的な仕組みの一つである。政策の立案と実行、政策に対する現地での受け止め、そしてその結末が復興に及ぼす効果という一連の有り様をモニタリングしていく仕組みであり、アーカイブに蓄積された社会的モニタリングの結果をガバナンスに反映させていくことで「らせん状」の復興過程の実現を目指す。その例として世論調査を取り上げ、住民、そして国民の意見の収集とその政策への反映の重要性を示す。

  • ──原発事故被災自治体の人口統計と「住民意向調査」を基に
    岩井 紀子
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_26-3_31
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     東日本大震災から12年が経過しようとしているが、福島第一原子力発電所の事故に巻き込まれた人々の多くと自治体は今なお模索している。旧避難指示区域と帰宅困難区域の自治体の人口統計、「住民意向調査」への回答、学校の統合と生徒数の推移には、避難先で新たに築いた生活拠点に留まるか帰還するかという避難者の葛藤が表れている。また、自治体の存続と将来設計に向けて住民をつなぎとめ、帰還を呼びかけ、新たな転入者の定住を図ろうとする自治体・県・国の取り組みの影響が表れている。本稿では、上記の統計と情報を基に、原発事故被災地区の住民と自治体の現状と課題──住民登録人口の減少、住民登録人口と居住者数の乖離、住民登録のない居住者が過半数を占める自治体、避難者のとらえ方の違い、住民の帰還意向の変化、帰還を決めた理由と帰還しない理由の変化、高齢層の帰還・帰還希望と世帯分離、子どもたちの環境を整える努力──を検討する。

  • 山下 祐介
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_32-3_35
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     2013年および2014年に行った東日本大震災の復興政策に関する二つの提言は、被災当事者を含むモニタリングとフィードバック回路の要請を行うものだった。提言から十年を経て振りかえると、この提言は十分に生かされず、懸念されていたコミュニティ再生の困難さが現実のものとなっている。それどころか一度採用された決定が、被災者・避難者という当事者の声に耳を貸さずに遮二無二にただ進み、巨大防潮堤/高台移転ありきの復興事業や、早期帰還のみを目的とした帰還政策によってコミュニティの回復が阻害された可能性がある。我が国の災害復興の政策形成過程に、PDCAサイクルを実現するための、モニタリングとフィードバック機構を取り付ける必要がある。科学・学術の協力と貢献なしに適正な政策は成り立たず、政治と学術間、また諸科学間の協働関係を確立し、国民の暮らしにとって意義のある現状分析と公論の場が提供されることが望ましい。

  • ──震災・復興政策アーカイブの歴史的役割
    町村 敬志
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_36-3_39
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     東日本大震災はその規模ゆえに、直接の被害だけでなく、復興をめざす政策自体が被災者や被災地に影響を及ぼし問題を深刻化させてきた。政策を検証する手続きは「政策評価」「行政事業レビュー」「白書」などの形で制度化されてきたものの、「復興」政策の政策評価は多様化する被災地・被災者のニーズを十分に反映できていない。従来の政策評価の限界を超え、震災被害者の主体的復興を支える政策を実現するためには、多様化する被災地・被災者の主観的思いや少数者の声へ配慮しながら、住民、行政、学術、市民などを交えた社会的モニタリングの過程を具体化する必要がある。だが、震災被害の資料保存と比べ、復興過程の資料保存はまだ十分ではない。震災・復興政策アーカイブがここで重要となる。長い道のりの復興を将来世代が検証できるようにするためにも、行政資料・統計から各種語り、市民活動資料に至る多様な資料の連携、廃棄される資料の緊急保存などが欠かせない。

第二部:被災地大学の取り組みから浮かび上がってきた論点の開示
  • ──福島原子力被災地の国際教育研究拠点
    山川 充夫
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_40-3_43
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     東日本大震災・原子力災害から12年が経ち、復興政策がインフラ整備・帰還促進から産業誘致・移住促進に転換された。それを具体化するのが福島イノベーション・コースト構想であり、この構想は国の復興構想会議が提唱する創造的復興の具体化である。廃炉やロボット・ドローンなど重点6分野が推進され、その司令塔的役割を担う国際研究教育機構が設立された。原子力災害からの被災者生活再建や地域再生の政策課題、それは人間存在の共同基盤としてのエクメーネのあり方であるが、その調査研究は日本が果たすべき国際的な責務でもある。国際研究教育機構に期待されるのは、地域共存的再生の視点を明確にし、被災者や被災地が取り戻すべき「生活の質」、「コミュニティの質」、「環境の質」に関わる研究教育であり、「人間の質=地域の質」を高める教育研究である。そのためにも福島県復興ビジョンが掲げる「原子力に依存しない社会」の視点が重要である。

  • 増田 聡
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_44-3_46
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     近年の地域づくりでは、「産官学民金」それぞれのセクターに期待される役割や提供しうる資源のあり方が改めて検討されている。災害復興の現場においても、従来型の公助中心の復興政策におけるセクター間連携の見直しを求める声も聞かれ、東日本大震災の発災から10年以上が経過し、復興検証やその成果の反映方策のあり方が改めて問われており、被災地における復興活動の当事者自らの手による復興モニタリング・検証の可能性を検討することの意義は大きい。特に本論では、市民セクターにおける自発的活動として、宮城県を中心とする「震災復興シンポジウム:みやぎボイス」を取り上げ、復興過程の実態と課題の変遷を住民目線でモニタリングして政策評価・提言に活かす試みを紹介したい。

  • 岩渕 明
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_48-3_51
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     東日本大震災から12年ほどたつ。復興過程をみるとき、原発事故の影響は福島県などと、被災地なり被災者を十把一絡げに県域でとらえがちであるが、課題は県域で収まる場合と、県域を越えて考慮すべきものもある。本稿では、国や県、あるいは非被災者の姿をマクロとし、一方で、限定的な被災地・被災者をミクロとしてとらえて原子力災害の有無による違いを検討する。国や県の復興のゴールの明示がないので復興事業をいつまで継続するのか危惧している。

     マクロ的には復興庁を中心に復興事業に取り組んできて、原子力関係を除けばハード面はほぼ完了し、国、岩手県、宮城県はほぼ平常に戻ったとして区切りをつける時期である。しかし、ミクロ的に見れば、原発災害を受けた地域や、強制避難させられた被災者以外にも帰還をためらう被災者や心の問題を抱える被災者が存在し、原発災害の有無にかかわらず彼らへの支援は共通的であり、継続しなければいけない。

第三部:被災地との往還と専門知の検証/再審
  • 横山 智樹, 山下 祐介, 阿部 晃成, 市村 高志, 三浦 友幸
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_52-3_55
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     本論文では、宮城県石巻市雄勝町、気仙沼市大谷海岸、福島県富岡町からの当事者の証言を通じて、現場で当事者が震災と復興の12年間をいかに経験し、それが復興の意思決定にどう反映されたのか(されなかったのか)を考える。雄勝と富岡では、限られた選択肢(防潮堤建設・高台移転、早期帰還または移住)が行政主導で既定路線化し、当事者たちが被災のさなかであるべき復興の姿として示したものは、行政から退けられた。一方で、大谷海岸では、防潮堤建設が進む中、綿密な調整と交渉から、「針の穴を通すような」計画修正が行われている。これらの証言が示唆することは、第一に、行政は政策を既定路線化せず、当事者たちが主体的に積み上げていくプロセスに配慮し、そこから現れてくるものを柔軟に組み込んでいくべきだということである。そして第二に、当事者と共にそのプロセスを言語化することで、政策現場へと接続していく学術の役割の重要性である。

  • 浅川 達人
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_56-3_59
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     復興計画に関する意思決定の場における主体とは、住民だけでなく、自治体職員、NPO・NGO、被災地大学の教職員なども含まれる。そのため意思決定の場には、「専門知」という普遍的な価値に基づく知の体系に立脚している主体と、「現場知」という固有な価値体系に基づく知の体系に立脚している主体とが混在することになる。東日本大震災被災地域の地域復興計画案に関する意思決定の場において実質的に決定権を握ったのは、「専門知」に立脚する主体であった。しかしながら、このような意思決定の方法が果たして妥当であったのかを検証する必要がある。理論上、意思決定の場で重視されるべきは地元住民の意思であり、「現場知」が参照され決定の根拠とされるべきだからである。その上で、意思決定の場における各主体に対する決定権の付与が公正(公平)に行われていたかどうかを、今後も恒常的に判断・評価する視点が必要だと考えられる。

  • ──社会的モニタリングのエージェントは誰か
    島薗 進
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_60-3_62
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     東日本大震災が引き起こした被害のなかでも、福島原発事故による被害は認知されにくい側面をことに多く含んでいる。被害がどのような範囲に及び、どれほどの程度のものかは、原発災害をめぐる数多くの裁判で争われてきている。対立する見方が併存する状況が続かざるをえないのだ。被害の不可視化の大きな要因の一つは、避難基準を高く定めたために「自己責任」で「自主的に」避難せざるをえない人々(区域外避難者)が数多く生じたことだ。区域外避難者の被害は認知されにくく、政府・自治体の支援は限定的になる。放射線量が比較的高い地域にそのまま留まった人々も、不安を語ることを抑圧されるなどのストレスを被った。公的には否認される甲状腺がんなどの健康被害も大きな争点となっている。公的には不可視化され、記憶されにくいこうした被害をどのように記憶していくかが大きな課題となっている。

  • 池田 恵子
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_63-3_65
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     社会で不利な立場にある人々とりわけ少数者から見た復興の課題は言説化されにくい。復興過程を把握し記録し、今後の復興政策に反映させる制度設計を検討する際に、言説化されにくい復興の課題をどのようにすれば盛り込んでいけるのか。言説化されにくい復興の課題は、震災前の不平等や排除の問題の延長線上にある。細分化された統計の収集と利用、意思決定の場である復興計画の策定委員の多様化などに加え、震災前の社会における当該課題の状況の理解と当該の当事者の状況について一番よく知っている草の根の支援者との協働は欠かせない。

  • ──阪神・淡路大震災が問いかけたもの
    奥村 弘
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_66-3_69
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     阪神・淡路大震災時、日本ではじめて地域の歴史資料保全活動が歴史資料ネットワークによって行われた。そこで行われた歴史資料と災害資料の二種類の資料の保存と活用からなる資料保全活動の特徴と災害復興における役割を明らかにする。さらにその後、現在まで日本各地で進められてきた自然災害時の資料保全活動の意味について概略する。

  • 玉野 和志
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_70-3_72
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     震災と復興をめぐっては、実態を把握し、対策を立て、実行に移し、それを評価して改善していくというモニタリングの必要性が強調されてきた。しかし、東日本大震災からの10年以上の歳月からわかってきたことは、政府の対策や政策は必ずしも被災地や被災者への配慮だけではなく、何か別の事情と力によって左右されていくということであった。それを批判することはたやすいが、容易には変わらない現実がある限り、顧みられることなく、打ち捨てられた、微細で、多様な人々の営みを詳細に記録していくことが求められる。ここではそれを「社会的モニタリング」とよんでおきたい。

特集
事故によるこどもの傷害を 減らすために
  • 山中 龍宏
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_73
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー
  • 山中 龍宏
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_74-3_78
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     事故によるこどもの傷害は、日常的な生活場面で多発している。救急搬送データをみると、毎年、ほぼ同じ発生数となっている。傷害を予防するためには、傷害データを収集、分析し、それに基づいた対策を検討して実施し、その結果を評価するという一連の流れが不可欠であるが、現在、傷害予防に関連する組織、機関は分断されており、傷害予防は有効な社会システムになっていない。

     傷害予防の原則は、3つのE(製品・環境の改善、教育、法制化)で取り組み、傷害が発生した状況の中から「変えられるもの」を見つけ、変えられるものを変えることである。そして、変えたことの結果を数値で評価する必要がある。

     これまで企業や行政機関の各部署は、傷害が発生した製品や環境についてのみ検討し、こどもの傷害すべてに関与することはなかった。こどもに関するすべての傷害に関与する司令塔として、2023年4月に設置される「こども家庭庁」の役割が期待される。

  • 宮地 充子
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_79-3_82
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     事故情報などには個人情報やプライバシー情報などが含まれる。このような情報を適切に取り扱うことが安心した情報収集と解析の第一歩となる。本報告書ではプライバシーを保護したデータ利活用に注目する。

  • 相澤 彰子
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_83-3_85
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     事故情報などの集計データを活用するためには、単純な統計処理では対応できない高度な計算が必要となる。本報告では急速に進展する人工知能(AI)がもたらす可能性を、特に自然言語処理技術に注目して議論する。

  • 北村 光司
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_86-3_88
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     子どもの傷害予防の第一歩は、どのような傷害が発生しているのか、という課題を把握するための傷害データを収集することである。しかし、傷害データをやみくもに収集しても、予防には活用できない。予防に活用することを念頭に記録するデータ項目や内容を検討しておく必要がある。傷害予防のためには、事故発生状況に関係する要素をどのように変えたら予防ができるかを検討できる必要がある。つまり変えられる変数を把握できる必要がある。本稿では、傷害予防に活用するための傷害データの考え方と具体的な項目について紹介する。

  • ──子どもの事故予防地方議員連盟の活動
    矢口 まゆ
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_89-3_91
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     政治にまったく興味を持っていなかった筆者が、一歩間違えれば重大事故に繋がりかねない危険な保育を目の当たりにし、市議会議員となり、一人の議員として子どもの事故を予防するために活動する中で、より確実な成果を出すためには組織の力が必要と考え、超党派の地方議員連盟を設立した。現在80名を超える所属議員は、互いに連携・協力して子どもの安全に関する問題に取り組んでいる。その活動は地域を変え、国を動かしてきた。今後は子どもの事故予防に関心を持つ地方議員をさらに増やし、議員がこの議員連盟で学び、その学びをそれぞれの議会に持ち帰り、提言をして成果を出す。そしてその成果が地域住民からの評価につながり、再び選挙で選ばれる。このような好循環を生み出し、全国で子どもの事故予防活動が活発に行われ、結果的に子どものケガが減る社会を作っていきたい。

  • ──心身機能が変化し続ける人のための生活環境デザイン
    西田 佳史
    2023 年 28 巻 3 号 p. 3_92-3_96
    発行日: 2023/03/01
    公開日: 2023/07/29
    ジャーナル フリー

     人生100年時代を迎え、心身機能が変化し続ける人に対する安全な生活環境デザインの問題が重要課題となりつつある。乳幼児は、心身機能が日々発達しており、それとともに事故の様相も大きく変化する。変化に随伴する事故の問題は高齢者にも当てはまる。日本学術会議の提言(2008年)では、安全知識循環型社会の概念を提唱し、その必要性を訴えた。その後、2009年には消費者庁が発足されるなど、傷害予防に向けた社会的な仕組みづくりが進んできた。一方で、2010年代から大きく発展している人工知能の流れからは立ち遅れており、新たな課題も浮かび上がってきている。本論文では、人生100年時代の要請にあった安全知識循環の課題として、傷害予防対策の質の制御へのパラダイムシフトの必要性、質の制御を生み出すための長期的な予防政策・研究デザインの必要性、オープンデータ化とデータサイエンスの活用の必要性、地域や現場実装における課題などについて述べる。

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