2023 年 28 巻 3 号 p. 3_92-3_96
人生100年時代を迎え、心身機能が変化し続ける人に対する安全な生活環境デザインの問題が重要課題となりつつある。乳幼児は、心身機能が日々発達しており、それとともに事故の様相も大きく変化する。変化に随伴する事故の問題は高齢者にも当てはまる。日本学術会議の提言(2008年)では、安全知識循環型社会の概念を提唱し、その必要性を訴えた。その後、2009年には消費者庁が発足されるなど、傷害予防に向けた社会的な仕組みづくりが進んできた。一方で、2010年代から大きく発展している人工知能の流れからは立ち遅れており、新たな課題も浮かび上がってきている。本論文では、人生100年時代の要請にあった安全知識循環の課題として、傷害予防対策の質の制御へのパラダイムシフトの必要性、質の制御を生み出すための長期的な予防政策・研究デザインの必要性、オープンデータ化とデータサイエンスの活用の必要性、地域や現場実装における課題などについて述べる。