近年,水産物の冷却に氷スラリーを用いることで品質が向上した,という報告が良く聞かれるが,科学的なデータによる検証例は少ない.そこで,氷スラリーによる鮮魚の冷却と凍結魚の解凍を想定し,金属球を用いて熱伝達率の測定を行った.その結果,冷却,解凍時とも,最初の5秒間は非常に大きな熱伝達率を示したが,10秒以降は液体の強制対流程度の値となった.一方,氷スラリーを強制的に流動させた場合,冷却では10秒以降も5秒までの極めて大きな熱伝達率を維持したが,加熱の10秒以降では強制対流の流速が増加した程度の伝熱促進に留まった.以上より,流動の効果を含めて,氷スラリーによる冷却,加熱の基本的な伝熱特性を把握することができた.