日本冷凍空調学会論文集
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36 巻, 4 号
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原著論文
  • 岩竹 渉, 河村 雷人, 関屋 慎, 佐々木 圭, 髙村 祐司
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 181-
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    スクロール圧縮機では,寒冷地における暖房運転のような高圧縮比運転時に冷媒の温度上昇によって運転範囲が制限される場合がある.その対策として,圧縮室の途中に液または二相冷媒を強制注入するインジェクション機構が一般に知られている.しかし,インジェクション配管による無効圧縮損失の増大と,圧力脈動の増大などが課題であった.そこで,著者らは圧縮室直前に液または二相冷媒を強制注入する吸入室インジェクション方式を考案した.本機構を搭載したスクロール圧縮機の試作,評価により,以下の知見を得た.(1) 冷媒の温度上昇を低減しながら,油溜め部の冷凍機油の希釈を抑制できる.(2) 圧縮室インジェクション方式と比べて,インジェクション配管の圧力脈動を77%低減できる.(3) 圧縮室インジェクション方式で生じていた無効圧縮損失を抑制することで,負荷率25%13%,負荷率50%8%,負荷率75%5%,負荷率100%2%の性能改善が可能である

  • 松本 崇, 荒田 洋平, 沓屋 魁, 宮田 一司, 濱本 芳徳 , 森 英夫
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 189-
    発行日: 2019/12/30
    公開日: 2020/12/31
    [早期公開] 公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,低質量速度条件40 kg/(m2∙s)を含んだ,水平矩形ミニチャンネル内凝縮熱伝達の基礎特性を明らかにするために,水力直径1.02 mm の単一矩形ミニチャンネルを用いて凝縮熱伝達率の測定を行い,得られたデータから熱伝達特性を検討した.試験冷媒にはHFC134a, HFC32, HFO1234ze(E)を用いた.質量速度の範囲は40-400 kg/(m2∙s),熱流束は2-8 kW/m2 である.実験結果から,凝縮熱伝達率は質量速度100 kg/(m2∙s)以下の低質量速度で高い値を示すことが明らかになった.また,このような傾向は,扁平多孔管を用いた実験や扁平多孔管対象の熱伝達率予測式を低質量速度域まで拡張適用して予測される傾向とは異なることが確認された.

再録論文
  • -1st Report: Analysis Modeling and Theory Construction-
    Tatsuya SASAKI, Yoshimi IKEDA, Fumihiko ISHIZONO, Katsunori SATO, Shin ...
    原稿種別: Translated Paper
    2019 年 36 巻 4 号 p. 199-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    There is a growing need to expand the upper limit of the operating range of compressors for air-conditioning and refrigeration systems. There are two design approaches to expand the upper limit. One is expansion of the stroke volume, but this increases the load of the sliding bearing as the compressive load of the refrigerant. The other is increasing maximum rotation speed, which increases the shear heat of the oil film; viscosity of the oil then decreases, and the load capacity of the sliding bearing decreases. Incidentally, the refrigerant is dissolved in the oil that lubricates the journal bearing, and the solubility and the dissolving viscosity change depending on the temperature and pressure conditions. The viscosity change of oil due to friction heat and refrigerant dissolving at high rotation speed and high load range cannot be ignored. So, we constructed a thermal elastrohydrodynamic lubrication analysis model that captures changes in viscosity due to oil film temperature and solubility, and clarified the influence of frictional heat generation, solubility and viscosity change on journal bearing characteristics.

原著論文
  • 前川 龍之介, 中島 裕人, POUDYAL Lochan Rajib, 鈴木 徹, 渡辺 学
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 211-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    近年,水産物の冷却に氷スラリーを用いることで品質が向上した,という報告が良く聞かれるが,科学的なデータによる検証例は少ない.そこで,氷スラリーによる鮮魚の冷却と凍結魚の解凍を想定し,金属球を用いて熱伝達率の測定を行った.その結果,冷却,解凍時とも,最初の5秒間は非常に大きな熱伝達率を示したが,10秒以降は液体の強制対流程度の値となった.一方,氷スラリーを強制的に流動させた場合,冷却では10秒以降も5秒までの極めて大きな熱伝達率を維持したが,加熱の10秒以降では強制対流の流速が増加した程度の伝熱促進に留まった.以上より,流動の効果を含めて,氷スラリーによる冷却,加熱の基本的な伝熱特性を把握することができた.

  • -伸縮性膜の厚さ,膜に施す細孔の位置と角度が性能に与える影響-
    大河 誠司 , 村田 匠, 蜂谷 卓之, 寳積 勉
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 223-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    水溶液を主成分とした蓄冷材の問題の一つに過冷却現象が挙げられる.その解決策として,細孔を開けたスチレンエラストマー膜を有し,その内部に水が封入されたカプセル型過冷却解消装置の挿入が提案されている.水の凝固点は蓄冷材より高いので,蓄冷材が融点に達する前にカプセル内の水が凝固する.凝固に伴う体積膨張によって膜が膨張すると,カプセルの面に設けられた膜の細孔が開き,露出したカプセル内の氷が蓄冷材内部と接触し,蓄冷材の温度が融点以下に達したときに凝固が伝播する.ただし,露出面が大きすぎるとカプセル内の水が融解する際,蓄冷材からの水溶液が混入しカプセル内の水の濃度が上昇してしまう.本研究では,膜の厚さ,細孔の位置と向きの違いが過冷却解消性能に及ぼす影響について検討した.

  • -シリカゲルのエタノール水溶液吸着特性-
    遠藤 真斗, 浅岡 龍徳, 横水 郁哉
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 235-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    低温の未利用熱の活用を目的とした吸着式アイススラリー生成機を提案し,その性能評価を行った.この装置では,エタノール水溶液を冷媒とする吸着冷凍サイクルにより,蒸発器内にアイススラリー を生成する.はじめに,水,エタノール,103050 mass%エタノール水溶液を冷媒として,シリカゲルの吸着特性を測定した.さらに,その結果を用いて吸着冷凍サイクルの理論COP を試算し,それぞれの冷媒の特徴を比較した.エタノール水溶液を用いた場合,水やエタノールを用いた場合よりもCOP が高く,脱着温度も70℃以下と低いことから,低温の未利用熱の利用を目的とする本装置の冷媒としてエタノール水溶液が適していることがわかった.エクセルギー効率の観点から見てもエタノール水溶液は有用であることを確認した.また,10 mass%エタノール水溶液を用いた場合,蒸発温度0℃と凝固点におけるエクセルギー効率がほぼ等しいことから,10 mass%エタノール水溶液はアイススラリーの生成機の冷媒に適していると評価できる.

  • 平野 繁樹, 川南 剛
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 247-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    太陽熱や工場排熱等を利用した温熱供給技術は,化石燃料のような枯渇性のエネルギー資源にかわる熱供給源として注目されており,それらのエネルギー資源を効率よく利用するための潜熱蓄熱システムの開発が急がれている.本研究では,潜熱蓄熱槽内における非定常的な融解現象を再現し,特性を評価するための効果的な数値解法を確立することを目的として,蓄熱槽内における相変化物質の配置と熱交換媒体の流動条件が,熱輸送挙動に及ぼす影響について数値解析的に検討を行った.数値解析モデルの構築には,粒子法の一種であるMPS(Moving Particle Semi-implicit)法に基づくアルゴリズムを採用した.本研究の結果,MPS 法に基づく融解計算モデルにて,蓄熱槽内における融解挙動を破綻なく計算することができ,相変化物質の融解挙動には周囲流体の流速条件の影響が小さいこと明らかにした.

  • 小山 寿恵, 輪嶋 史, 吉岡 武也, 永石 博志, 稲田 孝明
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 261-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    [早期公開] 公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

    海水から製造した氷スラリーを脱水した氷(脱水氷)は,漁獲物の鮮度保持に有効であり,特に漁獲物輸送時の冷却媒体として期待されている.しかし,脱水氷融解時の温度履歴を制御するためには,初期含水率の制御が必要であり,脱水氷の含水率に関する知見が求められる.本研究では,NaCl 水溶液から生成した氷スラリーを用いて,重力によって脱水氷を製造し,脱水氷の含水率の測定を行った.その結果,脱水氷の含水率は,氷粒子径の増加に伴って単調に減少することがわかった.また,脱水氷の含水率は,高さ方向に特徴的な空間分布を持つこともわかった.さらに,脱水氷と積雪では氷粒子径や液相の種類は異なるものの,氷スラリーの脱水を積雪の透水と同じ物理現象として扱えることが確認できた.

  • 松本 浩二, 江原 昂平, 前澤 一臣, 佐藤 翔, 梅原 友理, 綾谷 陸人
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 271-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    金属表面への氷の付着力は非常に強いことは良く知られている.そのため,従来の付着力に関する大半の研究は,付着力を抑制することが目的であった.本研究では従来の多くの研究とは異なり,強力な氷の付着力の有効利用のために,被工作物を工作台に固定するために氷をチャックとして利用する“冷凍チャック”に着目した.そして,より強力な氷の付着力を達成するために,コンデンサーを構成する銅板表面に直流電圧を印加した状態で,臨界ミセル濃度のアニオン系界面活性剤―純水混合液を銅試験板上で凍結させた後に生成された氷を剥離することで,氷の付着力を測定した.なお,氷の付着力は,氷の付着面積で除した”せん断応力“で評価した.同様の測定を印加電圧やその極性を変化させながら行った.また,電圧印加した金属への界面活性剤分子の吸着量と剥離した氷の表面エネルギーの測定により,測定された氷のせん断応力の妥当性を検討した.

  • 大久保 英敏, 廣谷 俊樹, 諸隈 崇幸, 安喰 春華
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 283-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    [早期公開] 公開日: 2019/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では, 大気圧下での飽和液体窒素へのプール沸騰熱伝達に及ぼす表面被覆層の影響を実験的に検討した.被冷却物体として,直径25 mm の銅球を用いた.銅球表面の被覆層として,氷層および霜層を用い,これらの厚さを変化させた.得られた結果として,冷却曲線と沸騰熱伝達特性に対する氷層の影響が顕著であることが確認できた.また,霜層を被覆層として用いた場合,遷移沸騰領域の熱流束が著しく増加し,核沸騰領域および限界熱流束も増加した.

  • -音響相図の構築-
    義岡 秀晃, 経田 僚昭, 八賀 正司
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 291-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    相変化スラリーの相変化量と熱流動を音速情報に基づき“視える化“することを目標に,水溶液の相変化過程と音響特性との連関について追究した.まず,超音波の簡易計測システムを構築し,塩化ナトリウム水溶液を供試して初期組成を変化させた凝固実験を行った.次いで,液相域・マッシュ域・固相域の各領域における音速変化を相変化過程と関連づけて特徴づけ,従来の温度と濃度を示強性状態変数とした相平衡状態図に対して,さらに示強性の音速情報を加えた相平衡状態図を創案した.その相図に基づき,種々の状態量が超音波により非侵襲検知可能であることが示され,最終的には相変化スラリーの氷充填率と音速の関係が明らかとされた.

  • 加藤 諒, 森本 崇志, 熊野 寛之
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 303-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    アイススラリーを配管輸送する際,流動条件や周囲の環境によっては管内での閉塞が生じることが懸念される.その原因の一つにアイススラリーが外部から冷却されることで生じる凍結があるが,その際の挙動は十分に解明されていない.本研究では,エタノール水溶液から生成したアイススラリーを矩形管に流し,上下から冷却を行うことでアイススラリーの凍結挙動の観察を行った. IPF,レイノルズ数,温度差をパラメータとして実験を行い,凍結問題の近似解であるStefan解との比較を行った結果,凍結層の厚さはStefan解をやや上回る傾向にあり,特に,氷粒子を有する場合や,レイノルズ数が比較的低い場合,矩形流路流路上部において,凍結層の成長速度がやや早くなることがわかった.

  • 森本 崇志, 池田 季基, 田中 裕人, 熊野 寛之
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 315-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,相変化物質を乳化することで液中に分散させた蓄熱熱輸送媒体である,エマルション型蓄熱材を対象とし,マイクロチャンネル内における流動および伝熱特性について,実験的,解析的に検討を行った.実験より,分散質の含有率および状態がエマルション型蓄熱材のレオロジー特性に影響を及ぼし,条件によって擬塑性流体の挙動を示すことがわかった.また,分散質が固相または液相の状態を維持しながら流動する場合において,ヌセルト数は単相流体とほぼ同等となること,分散質の融解を伴う場合には,見かけの比熱の増大により,ヌセルト数が増加することが明らかとなった.一方,分散質粒子の存在が伝熱に及ぼす影響は比較的小さいことがわかった.

  • -流動様相と固相率が局所熱伝達係数に及ぼす影響-
    水本 裕士 , 阿部 駿佑, 稲垣 裕之, 浅岡 龍徳
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 327-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    工場排熱や太陽熱等の中低温(200°C 以下)の熱利用を対象としたスラリー熱媒体として,エリスリトール水溶液の固液共存状態であるエリスリトールスラリーを提案する.熱媒体として使用するために,熱伝達特性について把握することを目的とする.実験は周囲から一様の熱流束で加熱されたステンレス管にエリスリトールスラリーを流し,固相率とレイノルズ数をパラメータとして局所熱伝達係数を測定する.層流では,管断面の局所熱伝達係数に関して,管側部と管下部の局所熱伝達係数が高くなることがわかった.乱流では,管断面で熱伝達係数の差は小さく,固相率の影響も少ないことがわかった.結果より,層流域において固相率と流動様相の変化が局所熱伝達係数に大きな影響を及ぼすことを確認し,システムの設計においては流動様相を考慮する必要があることを示した

  • -流動様相と固相率が流動特性に及ぼす影響-
    稲津 健太, 阿部 駿佑, 浅岡 龍徳
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 36 巻 4 号 p. 339-
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    中低温の未利用熱利用に適した熱媒体として,潜熱蓄熱材であるエリスリトールとその水溶液からなるエリスリトールスラリーを提案する.流動様相や固相率が流動特性に及ぼす影響について実験的に検討を行った.実験では,水平に設置されたステンレス管にエリスリトールスラリーを流し,圧力損失を測定した.管摩擦係数の実験値はすべてのレイノルズ数でポアズイユ流の理論式やブラジウスの式と比較すると大きく,特に層流での差異が大きいことが確認された.この差異について,レオロジーモデルを用いて検討したが,明確な原因を示すことはできなかった.また,層流域において分離流れになることを考慮した新たな管断面モデルを適用したところ,管摩擦係数と理論値との差異が小さくなった.流動様相がエリスリトールスラリーの流動特性に及ぼす影響は無視できないことが示唆され,分離流れを考慮したモデルを適用した流動特性評価が有効であることがわかった.

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