論文ID: 25-11R
すり身タンパク質の加熱によるゲル形成は,先にシェフテルらが立てたその他のタンパク質のゲル形成の分子機構に関わる仮説理論によく適合している. すり身のタンパク質の加熱ゲル形成は,次のように進行することが既に知られている. (1)10℃以下の低温(スケトウダラの場合)において,2.5~3.0% NaClと混和すると筋繊維中の太いフィラメント(ミオシン,ポリマー)がミオシンモノマーに解離する. (2)低温下では,NaClの影響を受けて,タンパク質は部分的に解鎖(変形)し,ポリペプチド鎖上 の疎水性部分が露出する (3)変形したタンパク質のゲル化は加熱温度に依存している. 5~30℃(スケトウダラの場合)の低温下では,分子間の疎水性相互作用によりゆっくりと坐りゲルが形成される.坐りゲルをさらに高温(85~90℃)で加熱すると,より広範な疎水性相互作用,S-S結合,及びイソペプチド結合により,剛性が劇的に強くなる. また,直接高温で加熱すると,急激に解鎖しタンパク質は不規則に相互作用して凝固する.