2021 年 59 巻 2 号 p. 95-103
非行少年に対する効果的な矯正教育のあり方を検討する上で、非行から立ち直った少年が少年院でどのような体験をしていたのかを検証することの意味は大きい。そこで本研究では、少年院を仮退院した男子少年102名を対象として、出院時アンケートの記述をもとに少年院での経験をどのように捉えていたのかを検討し、その捉え方の特徴と、出院後の再非行状況との関係性について分析した。その結果、少年院での辛い体験に肯定的な意味を見いだしている少年は、そうでない少年に比べて保護観察期間中の再非行率が有意に低いことが示された(χ2(1)=4.43, p<.05)。また、自己の罪悪感と向き合うなどの自身で統制可能な辛さのほうが、自由のなさなどの統制困難な辛さよりも肯定的な意味を見いだしやすいことも明らかとなった。今後は、少年院での体験を肯定的に捉えることが保護観察終了後も再犯・再非行率を下げることにつながるのか否かを確認する必要がある。