抄録
喫煙の空腹時血糖値(FPG)に及ぼす影響は,40本以上/日喫煙する肥満者でのみ認められることを以前に報告した.本研究では食前および食後の両血糖値を反映するHbA1cに及ぼす喫煙の影響について検討し,FPGに対する喫煙の影響と比較した.対象はHbA1cとFPGの両検査を受けた健診受診男性で糖尿病の薬剤治療を行っていない2,925名である.多変量ロジスティック回帰分析で非喫煙者に対する喫煙者のオッズ比を算出したところ,HbA1c 5.5%以上のオッズ比は20∼39本/日の喫煙者で1.49 (p<0.05), 40本以上/日の喫煙者で1.92 (p<0.1)であった.Body mass index (BMI)で2群に分け検討すると,喫煙の有意の影響はBMI24未満群でのみ認められた.一方,FPGが110 mg/dl以上のオッズ比は40本以上/日の喫煙者で2.06 (p<0.01)で,肥満度別に検討するとこの喫煙の影響はBMI 24以上群でのみ認められた.これらの結果から喫煙はFPGよりも食後血糖に対してより強い影響を与えると考えられた.また,この喫煙の食後血糖に及ぼす影響は非肥満群で大きいことが示唆された.