糖尿病
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症例報告
耐糖能異常からインスリン依存への進行まで12年間経過を観察中のGAD抗体陽性の糖尿病の1例
村木 絢子東 宏一郎小澤 裕理森本 二郎鈴木 裕也Cristiane S Hampe丸山 太郎
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2010 年 53 巻 7 号 p. 490-494

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抄録

症例は68歳(発症時)男性.1998年11月,近医にて境界型の血糖値とGAD抗体価高値を指摘され当科に紹介された.空腹時血糖値は93 mg/dl, HbA1c 5.7%,GAD抗体が13900 U/mlと高値を認めた.経過中HbA1c値は徐々に上昇し,2005年以降インスリン分泌能が低下した.2006年にインスリン導入に至り,GAD抗体価高値と経過から緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)と考えられた.我々は本例において毎年1回糖負荷試験を行い耐糖能とインスリン分泌の変化を観察しGAD65抗体のepitopeを検討した.本例ではepitopeのうちGAD分子中央部付近のb96.11への反応性が耐糖能異常の時期より高値を維持し,また経過中複数のepitopeに対する反応性をも獲得した.同様の傾向は急性発症典型例の1型糖尿病の過程でも認め,SPIDDMでもepitopeに対する反応性のmaturationがインスリン依存への進行と関係する可能性が示唆された.これまでSPIDDM症例で長期間詳細に経過観察しGAD65抗体のepitopeの推移を観察した報告はなく,本症の病態解明において極めて意義があると考え,報告する.

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© 2010 一般社団法人 日本糖尿病学会
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