糖尿病
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糖尿病のインスリン療法に伴うアレルギー並びに脂肪異栄養症と精製インスリンの有用性
阪本 要一斎藤 茂成宮 学横山 淳一田嶼 尚子池田 義雄種瀬 富男阿部 正和
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1981 年 24 巻 1 号 p. 49-56

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抄録
この研究では従来の市販インスリン製剤により治療を受けている糖尿病患者335名 (男性196名, 女性139名) について, インスリン・アレルギーおよびインスリン脂肪異栄養症の頻度とその臨床像を明らかにすることを目的とした.そしてこれらの病変に及ぼす精製インスリンの治療効果についても併せて検討した.得られた成績は以下のごとくである.
1) インスリン・アレルギーは335名中26名 (7.8%) に認めた.全症例皮膚型のアレルギー症状で全身型7例, 局所型19例であり, 性・年齢差は認めなかった.
2) インスリン脂肪異栄養症は335名中22名 (6.6%) に認めた.このうち18症例はインスリン脂肪組織萎縮のみを示し, 他の4例は脂肪組織萎縮と脂肪組織肥大の両病変を合併した.22名中17名は女性によって占められ, 明らかな性差が認められた.しかし年齢差は認められなかった.
3) 精製インスリンはインスリン・アレルギー症例に対してもインスリン治療の継続を可能とし, 6ヵ月以内に全例アレルギー症状が消失した.
4) 精製インスリンはインスリン脂肪組織萎縮に対しても, 治療開始1年後の成績で治癒率80%の有効性を示した.
以上の事実から, インスリン・アレルギーおよびインスリン脂肪異栄養症はいまだにそれぞれ7~8%の頻度で認められること, 精製インスリンはこれらの病変にきわめて有効に作用することを明らかにした.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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