抄録
生体内蛋白がnonenzymatic glucosylationによって抗原性を獲得するか否かについて, アルブミンをモデルに検討した.
Gainea pig albumin (GPA) をglucose, sodium cyanoborohydrideとincubationして還元型glucosylatedGPA (Red Glc-GPA) を合成し, これを7匹の雄モルモットに免疫し, 抗血清を得た。polyethyleneglycol法により抗体を調べた結果, 免疫したすべてのモルモットにRedGlc-GPAに対する抗体を認めた.この抗体は実際にモルモット血清中に存在すると思われるGPA, 非還元型glucosylated GPAとは交差反応を示さず, Red Glc-GPAと共通する糖結合lysine (glucitollysine) を有すると思われる還元型glucosylated human albuminおよびsodium borohydrideで還元したヒト血清, ヒトヘモグロビンとは交差反 応を認めた.また, sodium borohydrideで還元した非免疫モルモット血清では比較的強い交差反応を認めた.また, glucose, fructose, mannitol, sorbitolの糖類とは交差反応を示さなかった。
以上の検討の結果, この抗体はglucitollysineを中心とする部位を認識していると思われるが, それのみに特異的ではなく, 蛋白のglucitollysineの周辺の構造の相違が交差反応性に影響すると思われた.
以上, nonenzymatic glucosylationによって生体内蛋白が抗原性をもつことを示した.