糖尿病
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糖尿病性壊疽における足背動静脈酸素分圧較差
福山 昭一竹下 光宇賀田 茂彦西村 敏郎小林 伸子永野 聖司
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1985 年 28 巻 9 号 p. 1029-1034

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抄録
糖尿病生壊疽における壊疽発症の予見的指標を求めて, 糖尿病患者51例 (糖尿病性壊疽患者12例を含む) と非糖尿病者19例の動静脈の血液ガス分析, 趾尖容積脈波を測定した. 糖尿病性壊疽患者において網膜症の有無罹病期間5年間を指標として検討した. その結果上腕動脈・足背静脈酸素分圧較差は, 壊疽群では24.1±9.8mmHg (Mean±SD) で対照群 (38.9±12.9mmHg) に比して有意に低下していた (p<0.01). また非壊疽群でも網膜症を有し罹病期間5年以上の群で21.2±11.7mmHgと壊疽群との問に有意差を認めず, 対照群に比べて有意に低下していた (p<0.01). また足背静脈・肘静脈酸素分圧較差でも, 壊疽群は19.1±8.5mmHgで対照群 (1.7±12.3mmHg) に比べて有意に高値であった (p<0.01), 一方趾尖容積脈波では, 末梢性ブラトー波は壊疽患者の20%にしか認められず, その他壊疽に特異的な所見は見出せなかった. さらに組織での酸素解離に関与し, 長期のコントロールの指標であるHbA1と上腕動脈・足背静脈酸素分圧との相関は認められなかった. 以上より, 糖尿病性壊疽は網膜症など細小血管症を有し罹病期間の比較的長期なもの, さらに足背静脈血の酸素分圧が高値なものに発症しやすいことが示唆され, これらの症例は今後定期的なfollowが必要と思われる.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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