抄録
糖尿病性細小血管症の成因に関する血血液粘弾性の意義を明らかにするために, 細小血管症の重症度による血液粘弾性の変動を検討した. 対象は, 正常12例, 糖尿病54例である. 方法は, 血液粘弾性を岩本製作所試作のOP-Rheomderを用用いて測定し, 動的弾性率G′と損失弾性率G′′をその指標とした. 得られた成績は, 1) 網膜症: 正常と比較してG′はScott分類I期以上で, G′′はIII期以上で有意の上昇を認め, 網膜症を認めない群に比較して, G′, G′′ともScott IV期以上で有意の上昇を認めた. 2) 腎症: クレアチニンクリアランス値の低下に伴い, また尿蛋白排泄量の増加に伴い, G′, G′′とも有意に上昇した. 3) 神経障害: 心電図R-R間隔の変動係数の低下に伴い, G′, G′′とも上昇した. 以上より, 血液粘弾性の異常は, 細小血潅管症の重症度と密接な関係を有しており, その成因の一部として関与する可能性を示唆するものと考えられる.