日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: Y-2
会議情報
優秀研究発表賞応募演題
ニトロフラゾン投与ラットの肝臓における変化
*伊藤 今日子梶川 悟二井 愛介花田 貴宣土井 邦雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
抗生剤であるニトロフラゾン(NF)は,その精巣毒性について形態学的研究が行われてきたが,肝臓に対する影響に関する報告はごく少ない. 本研究は,高用量と低用量のNFをラットに投与した際の肝臓に対する影響を明らかにするとともに,NF低用量投与時に肝細胞増殖が確認されたため,肝細胞増殖関連因子の動態を検討した.また,これらの作用へのフリーラジカルの関与についても調べた.その結果,(1) 高用量NFは肝毒性物質としての作用を示し,肝細胞小壊死巣を誘発した.肝細胞壊死にはフリーラジカルの関与が示唆された.(2) 低用量NFはmitogenとしての作用を有し,生化学的・組織学的傷害を起こすことなく肝細胞増殖作用を示し,その作用は用量依存性,かつ可逆性で,連続投与してもある時点で停止することが明らかとなった.また,低用量NFのmitogen作用にもフリーラジカルが関与していることが示された.(3) NFのmitogen作用において,発現の増加した遺伝子セットは,他のmitogenとして知られる物質によるそれとよく類似しており,フリーラジカル発生 → early response genesが増加,肝細胞がprimingを受ける(G0→G1期の細胞が増える) → TNFα,TGF-αの増加による増殖刺激 → c-Ha-rasおよびサイクリンEの増加 → restriction point通過とS期移行 → 肝細胞DNA合成という経路を辿る可能性が示された.この様に,NFは,用量によって肝傷害物質としてもmitogenとしても作用し,そのいずれにおいてもフリーラジカルが関与していることが明らかとなった.また,mitogenとしての作用は可逆的で,その過程は,他のmitogenでみられるそれと類似していることも明らかとなった.
著者関連情報
© 2005 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top