抄録
これまでに我々は、妊娠ラット胎盤ではCYP3A1タンパクが常在的に発現していることを示した。続いて、妊娠ラットにCYP3A1タンパクの誘導剤であるDexamethasone (DEX) およびPregnenolone-16α-carbonitrile (PCN) を投与し、母体肝、胎盤および胎児肝におけるCYP3A1タンパクの誘導について明らかにした。今回は、Phenobarbital (PB) を妊娠ラットに投与し、母体肝、胎盤および胎児肝におけるCYPの発現動態を検索した。 F344妊娠ラットを用い、妊娠13日目から16日目までの連続4日間、処置群にPBを80mg/ml/kg (PB群)、対照群に生理食塩液を0.1ml/kg (Sa群) 、それぞれ腹腔内投与し妊娠17日目に剖検を行った。母体肝、胎盤および胎児肝を採材し、9種類のCYP抗体 (CYP1A1、CYP2B1、CYP2C6、CYP2C12、CYP2D1、CYP2D4、CYP2E1、CYP3A1およびCYP4A1) を用いてWestern blot 解析と免疫組織化学的検索を行った。母体肝では、Western blot 解析でCYP3A1タンパクの有意な誘導が観察された。CYP2B1タンパクは対照群では発現が観察されなかったが、投与群では顕著な誘導が認められた。CYP2D1タンパクは有意な発現の減少が観察された。胎盤では、Western blot 解析でCYP3A1タンパクの発現のみが観察されたが、対照群と処置群の間に有意差は認められなかった。免疫組織化学的検索の結果は、母体肝および胎盤ともにWestern blot 解析の結果と概ね一致した。胎児肝では、Western blot 解析でCYP3A1およびCYP2C6の有意な誘導が観察されたが、免疫組織化学的検索では明瞭な変化は認められなかった。