抄録
【目的】雄ラットの肝P450酸化系酵素活性は,暗期に高く明期に低い明瞭な日周リズムを示す.この日周リズムはリズム中枢である視交叉上核(SCN)により制御されており,SCNの破壊により消失する.時計発振遺伝子の周期的発現に関して,SCNでは光が最も強力な同調因子として作用するが,肝臓では光よりも摂食がより優位な同調因子として作用することが報告されている.今回,SCNと肝臓を支配する末梢の計時機構のどちらが肝P450酸化系酵素活性の日周リズムをより優位に調律しているのかを調べるために,制限給餌条件下での肝P450酸化系酵素活性を測定した.
【材料および方法】7週齢の雄性F344/DuCrjラットを購入し,12時間-12時間の明暗条件下で個別飼育した.制限給餌する動物には点灯後2時間から8時間だけ餌を与える一方,対照用動物には餌を自由摂取させた.8日間の制限給餌の後,明期および暗期の中間の時点で動物を解剖して肝臓を採材した.得られた肝臓よりミクロソーム画分を調製し,肝P450酸化系酵素活性およびP450含量を測定した.
【結果および考察】肝P450酸化系酵素活性に関して,飽食条件下では明期と比べて暗期で有意な高値が認められた.逆に,制限給餌条件下では明期と比べて暗期で有意な低値が認められた.P450含量に関しては,両実験条件下とも明期と暗期で変化が認められなかった.これらの結果より,SCNではなく肝臓を支配する末梢の計時機構が雄ラットの肝P450酸化系酵素活性の日周リズムをより優位に調律していると考える.