抄録
フタル酸エステル類であるdi(n-butyl)phthalate (DBP)の胎生期曝露ラットでは出生後に精巣の形成不全やLeydig細胞過形成・腺腫が認められることが報告されている。我々は腫瘍細胞への必須アミノ酸供給を担うことが知られているアミノ酸トランスポーターのうち、極めて多くの必須アミノ酸輸送を担う中性アミノ酸トランスポーター(L-type amino acid transporter 1) LAT1の胎生期DBP暴露ラットの精巣における発現分布について検討を行った。SDラット妊娠12?21期間中連日1000mgのDBPを連日経口投与し、生後35日齢、50日齢、65日齢、100日齢、150日齢での精巣でのLAT1の発現について免疫組織化学的および免疫電顕組織化学的検討を行った。生後50-65日齢でLeydig細胞過形成が認められた。LAT1抗体による免疫組織化学検討では生後35-65日齢でLeydig細胞と血管内皮細胞にLAT1の発現が認められたが、以後100日齢-150日齢ではLeydig細胞過形成部のみにLAT1の発現が認められた。さらに、免疫電顕組織化学的検討からLeydig細胞過形成部の毛細血管内皮細胞膜と細胞質にLAT1が局在することが明らかとなった。また、同部のLeydig細胞では細胞質にLAT1が分布していることが認められた。これらの結果から、胎生期DBP曝露誘発ラット精巣・Leydig細胞過形成病変においてアミノ酸輸送系タンパクの発現亢進が関わることが示唆された。