日本トキシコロジー学会学術年会
第32回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-45
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一般演題(口頭)
放射線誘発およびエチルニトロソウレア誘発胸腺リンパ腫の発生メカニズムの違い
*柿沼 志津子西村 まゆみ甘崎 佳子今岡 達彦大町 康島田 義也
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抄録
【目的】マウスの胸腺リンパ腫(TL)は、放射線やアルキル化剤などの曝露によって効率に誘発し、人のリンパ腫発生に関わる遺伝子の探索やその解析に有用であると考えられる。我々はこれまでに、放射線で誘発したB6C3F1マウスのTLでは、11番染色体のセントロメア側に高頻度でヘテロ接合性の欠失(LOH)が存在するが、エチルニトロソウレア(ENU)誘発TLや自然発生TLでは見られないこと、およびこの領域にマップされるIkarosが高頻度で不活化されていることを報告した。今回は、ENU誘発TLにおけるIkaros、p53、およびKrasの変異を調べ、放射線による発がんメカニズムと違いがあるかどうかについて検討した。【材料と方法】5週齢のB6C3F1マウスに、X線照射(1.6 Gyx4回)により放射線誘発TLを、ENU溶液を飲み水として投与(400 ppm、8 週間)しENU誘発TLを作成した。発生した胸腺リンパ腫は、DNA、RNA、蛋白解析用に保存し材料とした。Ikaros、p53、Krasの発現およびゲノムの変異を、RT-PCR、ウエスタンブロットおよび塩基配列決定によって解析した。【結果】胸腺リンパ腫の発生率は、放射線誘発、ENU誘発ともに同程度であった(約70%)。放射線誘発TLは、Ikarosの不活化頻度が高く(48%)その変異は発現抑制、点突然変異、挿入およびドミナントネガティブの4タイプであった。これに対して、ENU誘発TLでは、Ikaros不活化の頻度は低く(19%)点突然変異タイプのみであった。また、放射線誘発TLでは、Ikarosの変異は高頻度でLOHを伴っていたが、ENU誘発TLではLOHを伴わない点で異なっていた。p53およびKrasの変異を合わせると放射線誘発TLでは54%、ENU誘発TLでは52%に変異が見られた。【結論】これらの結果より、発がん物質によって、ターゲット遺伝子にが異なること、また、同じ遺伝子でも変異スペクトルが異なることが明らかになった。
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© 2005 日本毒性学会
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