抄録
アレルギー疾患は好酸球を中心とした炎症細胞による慢性のアレルギー性炎症と認識され、EPOやGATA-1のプロモーター領域遺伝子改変モデルの検討からも、治療を考える場合には好酸球に主眼を置くことに妥当性がある。我々は好酸球が核内レセプターであるperoxisome proliferator-activated receptorγ(PPARγ)を発現していることを見い出した。PPARγアゴニストはIL-5の好酸球生存延長効果に対してアポトーシスの誘導に関与し、eotaxinへの好酸球遊走抑制効果を持ち、PPARγアゴニストはアレルギー性炎症に対して好酸球活性化をサイトカイン・ケモカインによる反応系を押さえることで抑制的に働き、PPARγが免疫・アレルギー性疾患の治療のターゲットとなる可能性を示した。さらにTh2のマーカーとして認識されたCRTH2は最近DPと同様、PGD2受容体であることがわかり、好酸球機能におけるCRTH2とDPとの関連を検討し、何故2つの受容体を有するのかについて考察し報告したい。
一方、我々はPPARγに注目して検討しているとき、同時にこの反応系は性差によってその程度が異なる可能性を検討すべきであると考えた。事実、近年糖尿病治療薬として臨床応用されているチアゾリジン系(PPARγのアゴニスト)の副作用も女性に有意に多いという注目すべき現象があり、未だ性差に基づきPPARγという一つの分子の発現、シグナル、機能といった面での差異は検討されていない。現在我々は、PPARγの発現そのものの性差や増強因子に性差の存在を検討している。近年、粘膜免疫に関係するTh3における性差、さらには感作動物モデルにおける気道過敏性や抗体産生系における性差の可能性が蓄積しつつある。免疫・分子生物学的な性差があるのかという観点から、これらの疑問に対してひとつひとつ明らかにしていきたいと考えている。