抄録
日本のヒノキ人工林において林内雨滴を直接測定した七つの研究例をまとめ, 複数降雨イベントから得られた平均的な林内雨の運動エネルギーを雨量1 mm当りに正規化した運動エネルギー (KEN; J m−2 mm−1) と生枝下高・樹冠長との間に, それぞれ正の相関・負の相関を見出した。生枝下高の上昇に伴う滴下雨滴速度の上昇がKENを増加させ, 樹冠長の増大に伴い, 樹冠上層で形成された大きな滴下雨滴が樹冠下層に衝突し小粒径化する機会が増加することがKENを減少させることが考えられた。それぞれの影響を分離評価し, 生枝下高と樹冠長を用いてKENを推定する経験モデルを構築した。このモデルは, 異なる樹高・生枝下高・樹冠長を持つヒノキ人工林の平均的な林内雨の運動エネルギー推定を可能にし, 裸地化林床を有するヒノキ人工林における浸透能・表面流量・土壌侵食量の推定に役立つ式となる。