日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-105
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一般演題 ポスター
Ca或いはV.D3含有量の異なる飼料がラットの骨関連パラメータに及ぼす影響
*辻 暁司織原 由佳理堤 俊輔岩城 理進大野 理絵中西 豊佐藤 靖
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抄録
【目的】
安全性試験でみられた変化が毒性かどうかを評価する際、対照群との比較だけではなく、背景データを利用することが多々ある。自施設内の背景データを利用する際には飼育条件が同一であるため問題とはならないが、他施設で実施された背景データ或いは公表論文等のデータを利用する場合には、飼育条件が異なっており注意する必要がある。今回、背景データに大きな影響を及ぼす可能性のある「飼料」について注目した。そこで、一般に用いられているもののビタミンD3(V.D3)含有量の異なる2種類の飼料(CRF-1、CE-2)と、カルシウム(Ca)含有量の低い飼料(CE-2低Ca)を用いて、骨の成長の著しい6週齢の雄性ラットを用いて骨関連パラメータに及ぼす影響について検討した。
【方法】
CE-2 低Ca、CE-2、CRF-1を28日間給餌した雄性ラット(6週齢)を用いて、14日目に血液生化学的検査、尿生化学的検査及び骨マーカー検査(DPD、PTH、オステオカルシン)、28日目に腸からのCa及び無機リン(IP)吸収量を測定した。29日目に剖検し、大腿骨及び胸骨の病理組織学的検査を実施した。
【結果および考察】
飼料に含まれるCa量の少ないCE-2低Ca群において、経口から摂取するCaの絶対量の不足を補うために腸からのCa吸収率の増加や、骨からのCa放出量の増加を示唆する骨梁の減少がみられた。いずれの変化も血中Ca濃度の恒常性の維持を示唆する変化であり、骨マーカーも前述の変化を裏付けるものであった。CE-2群に比べてV.D3含量の高いCRF-1群において、V.D3による腸からのCa吸収率が増加し、血中Ca濃度が高値を示したが、尿中からのCa排泄量が高値であったことから、恒常性を維持していることがCRF-1群の結果から推察された。 基礎飼料として毒性試験に汎用されているCE-2及びCRF-1を用いて28日間飼育しても骨に変化は認められなかったが、Ca代謝に影響がみられたことを考慮すると、長期反復投与の場合には標準飼料であってもCa代謝或いは骨に影響する可能性があることが明らかとなった。
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© 2011 日本毒性学会
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