抄録
【目的】長期外用ステロイド療法の急激な中断に伴い、リバウンド症状がしばしばみられる。しかしながら、その発症頻度や症状の詳細については明らかとされていない。そこで我々は、実験的皮膚炎マウスに対しデキサメタゾンを長期間反復塗布することで掻痒を惹起する、ステロイド誘発性の新規掻痒モデルを作成した1)。本マウスモデルを用い、外用ステロイドによる掻痒誘発因子について検討した。
【方法】BALB/cマウスに対し2,4,6-trinitro-1-chlorobenzene (TNCB)を5週間反復塗布して慢性接触性皮膚炎を誘発した。反応惹起直後から5週間にわたりデキサメタゾンを反復塗布し、耳介浮腫および掻破回数を測定した。また、抗原刺激したマスト細胞の脱顆粒反応およびプロスタグランジン(PGD2)産生に対するデキサメタゾンの作用を、RBL-2H3細胞を用い検討した。
【結果】デキサメタゾンの反復塗布は、皮膚炎マウスの掻痒反応を有意に亢進したが、正常マウスに対しては掻痒を誘発しなかった。デキサメタゾンは耳介組織のPGD2産生を抑制した。さらに、デキサメタゾンは抗原刺激したRBL-2H3細胞のPGD2産生を有意に抑制したが、同一添加濃度において脱顆粒反応は抑制しなかった。
【考察】外用ステロイド反復塗布が誘発する、アレルギー性接触皮膚炎マウスの掻痒症状の増強は、皮膚マスト細胞のPGD2産生抑制に起因する可能性が示唆された。
1) Yamaura K. Doi R. Suwa E. Ueno K. J Toxicol Sci. 2011:36;395-401.