抄録
【目的】ブタは食性や解剖学的所見がヒトと多くの点で類似している。特に腎臓はヒトと同様の構造を有していることから、他の動物種よりもヒトに近似した腎機能パラメーターを示すと考えられる。今回、我々はNIBS系ミニブタの腎機能に関する基礎データを検索したので報告する。
【材料・方法】NIBS系ミニブタ (6ヶ月齢、雌) 6頭を使用した。採尿ケージに1週間の馴化後、尿量・飲水量を4日間連続で測定し、4日目の24時間蓄尿を採取した。その後、全身麻酔下で採血した。血清中および尿中生化学値の測定を行い、尿中生化学値は体重当たりの排泄量を算出した。次に糸球体濾過率(GFR)の指標となるイオヘキソール血漿クリアランス(PCio)を求めた。イオヘキソール(ヨード量として90 mg/㎏)を単回静脈内投与し、血漿中のヨード濃度よりPCioを算出した。全ての検査終了後に剖検し、腎重量を測定した。
【結果および考察】血清中生化学値(mean±S.D.)はTP 6.0±0.2 g/dL、Cre 0.69±0.09 mg/dL、BUN 4.3±0.5 mg/dLおよびシスタチンC 0.07±0.03 mg/Lであった。尿量は840±400 mL、尿中排泄量はTP 3.3±1.9 mg/kg/day、Cre 22.7±3.32 mg/kg/day、BUN 141.1±23.8 mg/kg/dayおよびNAG 0.23±0.28 U/kg/dayであった。PCioは115.9±30.4 mL/minであった。ヒトにおけるPCioは平均127 mL/min (Krutzen, E. et al., J. Lab. Clin. Med., 104, 995-961, 1984.)であり、ミニブタにおいてもほぼ同様の値を示した。血清中シスタチンCおよび尿中NAGは腎機能障害を鋭敏に反映するバイオマーカーとして知られている。今回、我々は正常動物において血清中シスタチンCおよび尿中NAGの基礎データを得た。今後、高齢および腎機能に障害を負荷したミニブタを用いることで、これらのバイオマーカーとしての有用性を検討する予定である。