日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-212
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ポスター
Human Chorionic Gonadotropin(hCG)を投与したラットにおける超音波画像検査を用いた精巣の限局性壊死の評価
*西土井 悠作尾崎 晴茂平井 加津子高井 有一大塚 博比古
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抄録
超音波画像検査は、同個体より経時的に臓器の形態観察や血流速度測定を非侵襲的且つ簡便に実施できる検査法である。本実験では、精巣の毒性評価における同検査の有用性を検証するため、11週齢の雄性F344/Jclラットにhuman chorionic gonadotropin (hCG)の2000 IU/kgを単回皮下投与し、投与28日後まで超音波画像診断装置(aplio-XG、TOSHIBA)を用いて精巣の変化を評価した。形態観察、精巣表面を蛇行する動脈(精巣動脈)の血流速度測定及び造影超音波検査を麻酔下にて実施した。投与2及び28日後に病理組織学的検査も実施した。
形態観察では、hCG投薬群で精巣の矮小化、精巣下部の輝度上昇および精巣下部の音響陰影が経日的変化としてみられた。輝度上昇は、病理組織学的にみられた鉱質沈着を伴う巣状壊死を反映していた。造影超音波検査においては、hCG投薬群で血行動態の指標である時間音圧曲線下面積(AUC0-40sec値)の低下及び最大音圧到達時間(TP)の延長が、精巣上部では投与6時間後に、精巣下部で投与6時間~2日後にそれぞれ認められた。特に投与6時間後の精巣下部での変化は顕著で、同時間帯には精巣動脈の血流速度も低下していることから、精巣下部は虚血状態となり、巣状壊死に陥ったと推察される。この病変の中心部では血管の壊死及び消失を特徴とする間質の壊死を伴っていたことから、投与2日後に精巣下部でみられたAUC0-40sec値の低下は壊死病変に伴う血行動態の低下を示唆している。投与7日後以降はAUC0-40sec値及びTPに変化はみられず、巣状壊死があるにも関わらす、血行動態が回復したと考えられた。以上の結果より、超音波画像検査を用いて形態観察、精巣動脈の血流速度測定及び造影超音波検査を実施することにより、hCG投薬起因の精巣毒性及びその特性を生前検査で評価することができ、その有用性を確認することができた。
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© 2012 日本毒性学会
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