日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-55
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ウサギの妊娠維持に対する抗菌薬と摂餌量の影響
*松岡 俊樹大島 よし子本多 久美加藤 多佳子鈴木 千春則武 健一下村 和裕三分一所 厚司
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抄録
<背景>ウサギの胚・胎児発生毒性試験では、母動物の摂餌量低下にともなう流産がしばしば認められる。摂餌量減少と流産の関連については過去に多くの報告があるが、摂餌量減少がどのような機構により流産を引き起こすかについて詳細な解析は行われていない。また、キノロン薬など広範囲抗菌スペクトルをもつ抗菌薬のウサギ胚・胎児試験では薬効用量付近で流産が頻発する。この事象は、抗菌薬投与にともなう摂餌量の低下が二次的に流産を発生させたものと考察されることが多い。
<目的>抗菌薬投与時の摂餌量が妊娠維持に与える影響を確認する。
<方法>Kbl:NZWウサギ(各群5例)を用いて胚・胎児発生毒性試験を実施した。妊娠6~18日にキノロン薬を投与した群を抗菌薬群とし、媒体投与のうえ抗菌薬群と等量の飼料を給餌(pair-fed)した群を摂餌調整群とした。対照群には媒体を投与し、150 g/日を給餌した。毎日採血を実施し、プロゲステロン濃度を測定した。
<結果>抗菌薬群では、投与開始後に摂餌が低下(約20 g/日)し、全例が妊娠20~26日に流産した。摂餌調整群は、全例が妊娠23~25日に流産した。対照群の摂餌量は全期間で100 g/日以上であり、流産はなかった。プロゲステロンは、対照群では妊娠28日の剖検まで高値を維持したものの、抗菌薬群及び摂餌調整群では流産の約一週間前から漸減した。
<考察>抗菌薬投与によって減少した摂餌量では、抗菌薬投与の有無に関わらず妊娠の継続が不可能であることが明らかとなった。また、抗菌薬投与、摂餌調整のいずれでも流産以前にプロゲステロンの低下が認められ、妊娠維持のための内分泌的制御に異常が生じることにより流産が引き起こされていると考えられた。なお、流産時期やプロゲステロンの変化には、抗菌薬群と摂餌調整群で若干の差異が認められたが、その意義については今後の検証が必要である。
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© 2012 日本毒性学会
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