抄録
確率推論の枠組みであるベイジアンネットを用いて、ラットを対象とした反復投与毒性評価システムToxBayを構築した。ネットは基本的に化合物カテゴリー、診断およびendpointの3層からなる。例えば溶血性貧血の診断の場合、RBCとHGB量の双方が減少した場合を毒性とした。7種の診断に対して毒性を引き起こす特徴的な部分構造を、カスケードモデルを用いたデータマイニングの技法により抽出した[1]。これらの部分構造群で化学的に類似したものを統合し、化合物カテゴリーノードを設定した。診断とendpointのノードは毒性専門家の意見に従い設定した。また、例えば酸は肝重量増を起こしにくいというように、いくつかのendpointでは化合物カテゴリーとendpoint間に特異的な相関が見られた。このような場合は、化合物カテゴリーからendpointへの直接のリンクを張った。化合物カテゴリーから診断への条件付確率表は、各カテゴリーにおける毒性発生頻度に従い確率を定め、NosiyOr関数により表現した。各診断からendpointへの確率表はEM learning法により値を定めた。このように作成したネットによる確率推論のシステムをwebアプリケーションToxBayとして実装し、インターネット上で公開している[2]。このシステムに化合物構造のSMILES表記を入力すると、ヒットした化合物カテゴリーや毒性確率の高い診断ノード、endpointノードが赤色で表示される。また、動物実験による結果も入力すると、非常にまれにしか起こらないネットの部分を赤色のリンクで表示するため、実験結果の評価に用いることもできる。
[1] BASiC: http://www.dm-lab.ws/BASiC/ で公開中。
[2] ToxBay: http://211.8.17.77/ で公開中。