抄録
自己免疫性皮膚疾患の多くは難治性の掻痒を主訴とし,症状の増悪に深く関与している。ヒスタミンH4受容体は,Th1/Th2バランス調節など免疫・アレルギー反応への関与が知られ,さらに痒み反応への関与が示唆されている。これまでに我々は,ヒスタミン及びサブスタンスPで誘発した急性掻痒モデルマウスにおいて,H4受容体拮抗薬が有意に掻痒を抑制することを見出した。そこで,アトピー様慢性掻痒モデルマウスを用いて同様の検討を行ってみたところ,アトピー様慢性掻痒モデルマウスにおいてもH4受容体拮抗薬が有意な抗掻痒・抗炎症作用を示すことを確認した。
さらに,H4受容体の掻痒における作用点を解明し,難治性掻痒治療におけるH4受容体拮抗薬の有用性を明らかにすることを目的として,表皮ケラチノサイトに注目して検討を行った。その結果,ヒト表皮組織を用いた検討により,表皮上層の分化したケラチノサイトが,表皮下層のケラチノサイトに比較してH4受容体を強く発現している事を見出した。さらに,ヒト不死化ケラチノサイト(HaCaT細胞)を用いた検討においても,mRNAレベル及び免疫染色によるタンパク質レベルでのH4受容体の発現を確認した。一方,HaCaT細胞での分化誘導作用の検討から,分化に伴いH4受容体が強発現することを確認した。これらの検討より,H4受容体を有し掻痒反応を促進性に制御する細胞として,表皮ケラチノサイトが有力な候補細胞であることが示唆された。