日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: W1-4
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ワークショップ 1 腎毒性評価の新規手法:その基礎から臨床応用へ
酸化ストレスマーカーとしてのビリルビン抗体(24G7)とその応用
*山口 登喜夫
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キーワード: バイオマーカー, 抗体, 尿
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抄録
近年,活性酸素やフリーラジカルによる酸化ストレスは,腎障害,動脈硬化,虚血性脳心血管障害など極めて広範囲の疾患に関与しており,そのメカニズムはかなり詳細にわかってきている。そこで抗酸化栄養素の摂取による予防治療や健康維持に強い関心が寄せられている。しかし,抗酸化成分として何をどれだけ摂取するのが最良かを検定すべき標準的指標は無いのが現状である。従って個人の適時の生体内レドックス状態を示す酸化ストレスマーカーが必要となってくる.ヘム代謝物であるビリルビン(BR)は,非常に好都合なことにそれ自身が生体内の強力な低分子抗酸化物質であると同時に,活性酸素種により酸化されて生成するバイオピリン(BP)は速やかに尿中に排泄されるためリアルタイム型の酸化ストレスマーカーとなりえる。また抗酸化栄養素と異なり,食事量による変化や日内変動が無いので通常BRの血中濃度は一定である.またBRは可逆的な分子内水素結合を形成する特殊な分子構造で,疎水性から親水性への相互変換により細胞膜を自由に通過でき,血液循環系に限らず組織や細胞内に普遍的に存在する理想的な低分子抗酸化物質と言える。さらにBRは自殺的抗酸化物質であり,酸化されて生成したBPはビタミンCやEと異なりレドックス循環により還元されて元のBRには戻らない。従って個人の酸化ストレス度は,BRの酸化分解により生成される尿中BPの増加量として指標化される。またBPの多様性として,ある疾患に特異的な単一或いは複数のBPのプロファイル化によって特定の疾患の鑑別診断につながるバイオマーカーの開発が可能となる。演者は,ヘム代謝を研究テーマとしており,その研究過程で生体内酸化ストレスマーカーとなるBRの抗酸化作用について独自に開発した抗BR単クローン抗体(24G7)を用いて得た幾つかの臨床的知見を報告し,さらに抗体作製プロセスと動物及びヒトの尿分析における注意点についても紹介したい。
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© 2013 日本毒性学会
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