日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: W1-5
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ワークショップ 1 腎毒性評価の新規手法:その基礎から臨床応用へ
腎臓幹細胞からの腎臓構造再構築技術を用いた新たな評価法の開発
*喜多村 真治
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抄録
腎臓は体内における重要な排泄臓器であり,人体の恒常性を担う臓器である。現代は,様々な化学物質に囲まれており,そのような化学物質を腎臓は代謝し,排泄を行う。その過程で腎障害が起こることもあり,腎機能低下に繋がることがある。
現在クレアチニンや尿素窒素,尿異常などによって腎機能評価が行われているが,それらは腎障害と時間軸的にも的確に評価しているとは言い難い。新たな腎障害マーカーも提案されているが,腎臓構造の複雑性から十分に評価しえるかは不明である。そのような中,我々はin vitroにおいて腎臓機能を的確に評価しえる方法の開発を行ってきた。
我々は,以前より成体腎臓の再生能に着目し,成体腎臓から自己複製能,多分化能,再生能をもった成体腎臓幹/前駆細胞様細胞(rKS56)の樹立を行い,再生治療の可能性を模索してきた(Kitamura S at el. FASEB J. 2005)。今回,我々が提唱するのは,成体腎臓幹/前駆細胞様細胞を使用し,三次元ECM内にて三次元培養を行い,in vitroにおける臓器再構築を行い,新たな腎臓毒性の評価法を開発することである。我々はKS細胞を使用し,三次元的な臓器再構築に成功し,その構造は糸球体から近位尿細管~ヘンレのループ,遠位尿細管,集合管,腎杯様構造を伴った腎臓最小構成単位であるネフロン構造に類似していた。本構造は,光顕レベル,電子顕微鏡レベル,染色レベルにおいて,腎臓構造類似であることが確認された。 
本構造体において,尿細管機能である物質輸送能や,低酸素反応性のエリスロポエチン産生能も確認できており,腎臓様構造体における組織的な構築のみならず,機能も発揮していた。
細胞レベルからの臓器作製は未だ行われておらず,世界初の試みと思われる。本構造体再構築を使用し,新たな腎臓障害評価法へ繋げていきたい。
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© 2013 日本毒性学会
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