抄録
『目的』難分解性有機フッ素化合物(PFAA)は炭素数4-16の基本骨格と硫酸基, カルボキシル基などの官能基を持つ一連の合成過フッ素化合物である。これらは一般に環境中や人体内で混合して存在する。しかしながら, この混在状態についての体系的報告は無い。そこで我々は日本全土における河川水と近海水中のPFAAの混在状態を調査検討した。
『方法』2010年に全国98箇所から採取した河川水と2011年に31箇所から採取した近海水中の炭素数4-16のカルボキシル基PFAA(C)のすべてと炭素数4,6,8,10の硫酸基PFAA(CS)をLC-MS/MS を用い測定した。
『結果と考察』
河川水においてはC8, C9, C6 とCS8 が3.22, 1.38, 1.37及び 1.10( ng/L)という高値を示した。 海水中では C6, C8, C9, とCS8が高く, 0.35, 0.92, 0.50及び 0.27であった。 河川水中 のC8, C9, C6 及び CS8 間の相関係数(r)は高く有意で, C9 vs C8, C9 vs CS8, C8 vs CS8 及び C6 vs C8は0.846, 0.843 , 0.792及び0.742であった。海水中のPFAA濃度や混在状態は河川水と同様な傾向を示した。
C8, C9 及び CS8の高値と高いr はこれらのPFAAが長期にわたって同様な目的に使用されてきたこと, 及びそれら物質の難分解性によるものと思われた。最近C8の代替物としてC6が製造使用され始めている。C6とC8の高いr はこのことを反映しているものと思われる。CS8 やC8と異なりC9やC6は公的規制を受けていない。しかしながら, C9は人体に長く留まる可能性があり, C6汚染は急速に悪化する可能性がある。従って, これらの動向についても注意を払う必要があると思われた。