抄録
ヒトにおいては外部からの情報を得る器官である感覚器のなかで、視覚はその83%をしめるというデータがあり、非常に重要でかつ鋭敏な器官である。視覚を扱う眼科関係の検査に関しては、機能や形態など様々な検査があり、今回は実際に眼科の臨床で用いられている検査を紹介するとともに、眼科的な障害が生ずるとされている薬剤でその毒性の評価のためにどのような検査が行われているかに関してお話しする。
機能検査としては、自覚的検査や他覚的検査などがあるが、もっとも有名な検査は視力検査や視野検査であり、非常に感度の高い検査ではあるが、あくまでも協力を得られる方において初めて検査が可能となるような自覚的検査である。幼児などのように協力の得られないような場合は、何らかの他覚的検査を用いて測定する。代表的なものは、網膜疾患を疑う場合は網膜電図、視神経疾患を疑う場合は視覚誘発電位などの検査により、視力や視野などに関してはある程度の推測が可能である。もっと簡単な方法としては視運動性眼振(Optokinetic nystagmus)などもある。いずれにしても自覚的検査のほうが感度は高いものと思われる。
形態検査としては、代表的なものは細隙灯検査や眼底検査である。これらの検査に関しては、ある程度の協力は必要にはなるが、幼児などでもとりあえずは可能な検査である。これ以外にも蛍光色素を静注しての眼底の検査もあり網膜血管の透過性などの評価を行う。また近年光干渉断層計(OCT)の進歩が著しく、微細な網膜の変化を検出できるだけでなく、量的な評価に関しても可能となった。
また眼科的に障害が出るとされているいくつかの薬剤に関して、評価に必要な検査を紹介する。