日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-22
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一般演題 口演
リバビリン治療された慢性C型肝炎患者の自己抗体が認識する細胞質ロッド・リング構造の電子顕微鏡による観察
*中島 民治田中 晋佐藤 実
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抄録
【背景・目的】リバビリンは、細胞内のイノシン単リン酸デヒドロゲナーゼ(inosine monophosphate dehydrogenase, IMPDH)に結合してDNA合成を阻害する経口抗ウイルス薬である。C型肝炎ウイルス感染症に対してインターフェロンアルファとともに用いられるが、この治療を受けた患者の約20%で細胞質のロッド・リング構造(Rods and Rings structure, RR)を認識しIMPDHを標的とする自己抗体が産生される。RRは通常の細胞では発現されないが、リバビリンで高率に誘導される。本研究では、細胞質RRの形態的特徴を蛍光顕微鏡および電子顕微鏡で追求した。
【方法】スライド上のHeLa細胞(ヒト子宮頸癌)を、1 mMリバビリン下で3時間培養しRRを誘導、アセトン・メタノールまたはパラホルムアルデヒド/グルタールアルデヒド固定した。RR/IMPDHに対する自己抗体陽性のC型肝炎患者血清、ついで蛍光標識抗ヒト IgGと反応させ蛍光顕微鏡で観察した。電顕観察は0.2% Digitonin(PBS)で前処理後、ウサギ抗IMPDH2抗体、ついでHRP標識二次抗体と反応後DAB発色、グルタールアルデヒド・オスミウム二重固定、脱水後、倒立ゼラチンカプセル法によってエポン包埋し行った。
【結果】蛍光抗体法で細胞質に多数のロッド(3~10μm長の棒状)およびリング(2~5μm径の環状)構造が観察された。これらは、細胞に複数個存在する場合があり一部は核内にもみられ、両者が同時に観察される細胞もあった。電顕観察では、RR構造は、中間径フィラメントに似た単一の細線維よりなる結晶状の構造物であり、それが糸状(ロッド)および環状(リング)の構造を呈し、限界膜は持たなかった。 RR誘導の経時的観察からリバビリン処理した細胞質内の脂肪体(Lipid bodies)上にIMPDHが集積し、この表面でIMPDHの集合および成長が起こり、ロッド形成が進むことが示唆された。
【結語】RR形成過程の解明がリバビリンによる自己抗体誘導機序の理解に重要と考える。
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© 2015 日本毒性学会
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