日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-33
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一般演題 口演
DNAメチル化阻害剤ゼブラリンによるHepG2細胞のシトクロムP450遺伝子発現亢進
*中村 和昭相澤 和子Kyaw Htet AUNG田上 昭人
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抄録
DNAのメチル化は遺伝子発現を負に制御し、近年の研究から、発がんあるいは細胞特異的遺伝子発現制御に重要な役割を果たしていることが示されている。ゼブラリンは、ゲノムDNAの脱メチル化を引き起こすシチジン類縁体のDNAメチル化阻害剤である。今回我々は、ヒト肝癌由来細胞株であるHepG2細胞を用いて、ゼブラリンによるHepG2細胞におけるシトクロムP450(CYP)遺伝子発現亢進とその作用機序を検討した。培地へのゼブラリン添加は、HepG2細胞のCYP遺伝子発現を亢進させた。ゼブラリンはDNAメチル基転移酵素(DNMT)を抑制することから、HepG2細胞においてsiRNAを用いたDNMT1発現抑制によるCYP遺伝子発現変動を検討した結果、CYP遺伝子発現はゼブラリン添加時に比べ低かった。我々はこれまでの検討により、ゼブラリンがHepG2細胞においてdouble stranded RNA-dependent protein kinase(PKR)を抑制することを見出している。そこで、HepG2細胞においてsiRNAあるいは阻害剤を用いたPKRの抑制によるCYP遺伝子発現変動を検討した結果、CYP遺伝子発現はゼブラリン添加時に比べ低かった。一方、DNMT1とPKRを同時に抑制した場合、ゼブラリン添加時と同程度のCYP遺伝子発現亢進を認めた。これらの結果から、ゼブラリンはDNMT1およびPKRの両者を阻害することによって、CYP遺伝子発現を亢進していると考えられた。HepG2細胞は肝機能を有しているものの、その肝機能は著しく低いことが知られている。一方で、HepG2細胞は汎用性の高い培養細胞として多くの研究者に使用されている。したがって、ゼブラリンによるCYP発現亢進機序の解明は、HepG2細胞の機能亢進を誘導する新たな遺伝子発現制御機構の解明につながると考えられ、HepG2細胞の毒性研究等への応用に可能性が広がるものと期待される。
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© 2015 日本毒性学会
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