日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-15
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一般演題 口演
異なる経路で酸化ストレスを発生する非遺伝毒性肝発がん物質によるp53遺伝子欠損gpt delta マウス肝DNA中の酸化的DNA損傷とin vivo変異原性
*田崎 雅子黒岩 有一井上 知紀日比 大介松下 幸平石井 雄二能美 健彦西川 秋佳梅村 隆志
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抄録
【目的】酸化ストレスは細胞周期関連遺伝子の転写活性化を通じて腫瘍促進効果を発揮することが知られている。一方、酸化ストレスは8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)に代表される酸化的DNA損傷を引き起こすことから、遺伝子突然変異誘発の可能性も考えられている。そこで今回、異なる酸化ストレス産生系を有する非遺伝毒性肝発がん物質をp53ホモ欠損(p53-/-gpt deltaマウスとその野生型(p53+/+)に投与して、肝DNA中の8-OHdG並びにレポーター遺伝子突然変異体頻度(MF)を検索した。【方法】7週齢、雄C57BL/6系p53-/-及びp53+/+gpt deltaマウス各群5匹にペンタクロロフェノール(PCP)を600及び1200 ppm、ピペロニルブトキサイド(PBO)を6000ppm、フェノバルビタール(PhB)を500 ppmの濃度で13週間混餌投与後、肝臓を摘出し、NQO1Cyps1A11A22B10のmRNAレベル、8-OHdG量並びにgpt及びred/gamのMFを解析した。【結果】PCPの何れの投与群においてもNQO1のmRNA並びに8-OHdGレベルの有意な上昇が認められたが、遺伝子型間で差異は認められなかった。PBO投与群でNOQ1Cyps1A11A22B10、PhB投与群でCyp2B10のmRNAレベルの有意な上昇が認められ、PBO投与群で8-OHdG量が有意に増加したが、遺伝子型間でこれらの変化に差異は認められなかった。また何れの投与群においてもgptならびにred/gam MFの上昇は認められなかった。【考察】代謝過程の酸化還元サイクルやCYP誘導により酸化ストレスを産生する肝発がん物質をgpt deltaマウスに投与すると、肝臓中のそれぞれの酸化ストレス産生に寄与する遺伝子のmRNAレベルは上昇し、酸化的DNA損傷の増加も観察されたが、遺伝子突然変異の誘発は認められず、酸化ストレス高感受性のp53欠損マウスにおいても同様の結果であった。従って、酸化ストレス産生系を有する非遺伝毒性発がん物質の発がん機序には酸化的DNA損傷による遺伝子突然変異は関与しない可能性が示された。
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© 2015 日本毒性学会
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