抄録
サルモネラ菌由来LPSの0.6 mg/kg単回静脈内投与により作製したカニクイザルDICモデルを第39回日本毒性学会学術年会(2012)で報告したが,当該モデルではDIC関連マーカーの個体差が大きく,治療薬の有効性評価は困難であった.そこで本研究では,個体差の小さいDICモデルを作製するため,LPSの種類と投与量を検討した.まず,6頭の無処置雄カニクイザルから採取した末梢血単核球とLPS(大腸菌由来6種,サルモネラ菌由来1種,緑膿菌由来1種)を反応させたところ,大腸菌由来LPS K235はTNF-α誘導能が高く,個体差も最小であった.次に,そのK235の0.6および2.4 mg/kgを雄カニクイザルへ単回静脈内投与し,投与前,投与直後,投与後2,4および6時間に採血し,血液学的検査,血液生化学的検査,凝固・線溶系検査およびサイトカイン検査を行った(各群3頭).生理食塩液投与の対照群と比較して,0.6 mg/kg群ではLPS誘発DICに特徴的な凝固系活性化(血小板,フィブリノーゲン,ATIII,プロテインCの低下,TAT,可溶性フィブリンモノマーの上昇,PT延長),線溶系活性化(Dダイマー,α2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体の上昇)および線溶系抑制(PAI-1の上昇)がみられたが,個体差が大きかった.一方,2.4 mg/kg群は0.6 mg/kg群よりも凝固・線溶系活性化,線溶系抑制ともにその程度は大きく,一方で個体差は小さく,ほとんどのマーカーで対照群と比較して有意に変化した.また,投与後6時間の採血後に剖検し病理組織学的検査を行った結果,肝臓でPTAH染色陽性の沈着物が両群でみられた.以上の結果から,大腸菌由来LPS K235を2.4 mg/kg単回静脈内投与することで治療薬の有効性評価に使用可能なカニクイザルDICモデルが作製できたと考えられた.