抄録
【目的】光線力学的療法(PDT)は、腫瘍細胞に選択的に蓄積する光感受性物質を投与後、患部に特定波長のレーザーを励起照射することで、腫瘍細胞を死滅させる治療法である。本研究では、PDT処理が神経膠腫細胞に誘導する細胞死の形態について検討した。
【方法】光感受性物質としてレザフィリン(NPe6)を、神経膠腫細胞としてT98G細胞を用いた。T98G細胞をNPe6で前処理後、664 nm、10 J/cm2のレーザー光を照射し、PDT(NPe6-PDT処理)を行った。
【結果と考察】NPe6-PDT処理24h後の細胞のviabilityを観察したところ、NPe6の処理濃度依存的なviabilityの低下が認められた。このとき、necrosis指標である細胞の膨満化、乳酸脱水素酵素の細胞から培地中への漏出およびpropidium iodide染色性の向上も認められた。次に、この細胞死にnecroptosis(シグナル伝達により引き起こされるとされるnecrosisの一形態)が関与しているかについて確認した。NPe6-PDT処理したT98G細胞において、necroptosisを起こした細胞で一般的に観察されるautophagosomeの形成とLC3-IIタンパク質の増加が認められた。さらに、necroptosisの誘導にかかわるシグナル伝達タンパク質であるRIP-1、RIP-3およびMLKLの作用を阻害剤あるいはsiRNA処理により抑制したところ、NPe6-PDTによる細胞死が抑制された。これらの結果から、NPe6-PDTは神経膠腫細胞に対してnecroptosisを引き起こすことが示された。