日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-5
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シンポジウム6 ヒト副作用リスク最小化に向けたトランスレーショナルリサーチ:医薬品の副作用研究 in vitroから臨床まで
臨床現場における副作用リスク最小化へのチャレンジ - 薬剤性肝障害の早期予測 –
*藤田 朋恵熊谷 雄治
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抄録
薬剤性肝障害(DILI)は実臨床における薬物使用において、頻繁に遭遇する有害反応であり、重篤化した場合には生命にもかかわる重要な問題である。このため、実臨床におけるDILIの早期発見と開発段階におけるリスクの判断が求められる。DILIは大量の薬物曝露によって生じる中毒性の障害と特異体質性の2つに大別される。中毒性のDILIを生じる代表的薬物としてアセトアミノフェンがよく知られており、リスク群の特定がかなり進んでいる。例えば、アセトアミノフェンからCYP2E1により代謝されて生ずる中間代謝物NAPQIが肝細胞を傷害するが、2E1の活性が誘導されたアルコール多飲者でリスクが高いことや、代謝酵素であるUGT1A6の活性が低下していると考えられる病態でのDILI発生率が高いことが報告されている。後者の特異体質性のDILIにはアレルギー性と代謝性によるメカニズムが考えられており、代謝性のものはイリノテカンやイソニアジドに代表されるように代謝酵素であるUGT1A1やNAT2の遺伝子多型によることが報告されている。このようにある程度メカニズムが判明しているものについては、薬理遺伝学も含めたリスク群の特定が可能であると思われる。
DILIの症状、臨床所見は非特異的なものが多く、マーカーとしてAST,ALTなどが使用されている。しかし、これらは必ずしも特異的な肝障害のマーカーではないことが早期発見の上での問題点である。特に新薬開発の段階では、AST,ALTは入院拘束を伴う臨床薬理試験において栄養状態の変化によって上昇することがあることや、HMGCoA還元酵素阻害薬のように薬理作用としてAST,ALTを上昇させるものもあるため、より特異的なマーカーが望まれている。臨床試験では、重篤なDILIの予測のためにHy’s Lawがよく用いられているが、その予測性についての評価は十分ではない。現在、種々のミクスを用いたDILIへのアプローチが行われており、今後はその成果に期待したい。
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© 2015 日本毒性学会
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