日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S8-5
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シンポジウム8 環境毒性学の新たな潮流 ―環境汚染物質による生活習慣病、生活環境病の増加・増悪とそのメカニズム―
環境汚染物質による現代病増悪の細胞・分子メカニズム
*小池 英子
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抄録

生活環境中には、大気汚染物質や生活用品に由来する化学物質など様々な環境汚染物質が存在しており、それらの一部は、現代病として挙げられるアレルギーや生活習慣病等の炎症性疾患との関連性が懸念されている。 我々はこれまでに、汎用可塑剤のフタル酸エステルや、大気汚染物質として知られるベンゾ[a]ピレン、樹脂原料のビスフェノールA等がアレルギー病態を悪化させること、その一要因として、抗原提示細胞の活性化によるTh2反応の亢進を明らかにしてきた。また、in vitro実験でも、これらの化学物質が炎症に関わる上皮細胞や免疫担当細胞の活性化およびTh2反応を促進することを見出している。これらを背景とし、近年我々は、まだ健康影響評価が十分でない臭素系難燃剤(BFRs)を対象とした研究を進めている。
BFRsは、電化製品や建材、生活用品に幅広く使用されている化学物質であり、環境中への残留性や体内蓄積性、内分泌撹乱作用が指摘されていること、空気やダストを介したヒトへの曝露が想定されることから、その健康影響が懸念されている。代表的なBFRsであるポリブロモジフェニルエーテル(PBDEs)、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールAを対象としたin vitro実験の結果、軽微ではあるが、いずれのBFRsもマウス脾細胞中の抗原提示細胞の活性化やTh2サイトカイン産生の促進を認めた。また、ヒト気道上皮細胞の炎症性タンパク(ICAM-1、IL-6、IL-8等)の発現に対しては、臭素化レベルや化学構造によって異なる作用を示し、その機序には、EGFR tyrosine kinase経路の活性化や、甲状腺ホルモン受容体等の核内受容体への修飾が、一部寄与している可能性が示唆された。本講演では、BFRsが炎症反応に及ぼす影響を中心に、これまでの成果と現在検討中の肥満病態の進展に関わる免疫担当細胞への修飾を含めて紹介する。

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© 2015 日本毒性学会
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