日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-2
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シンポジウム1 インビトロ・インシリコ手法による全身毒性予測評価の現状と課題
全身毒性の予測へ向けた毒性データベース -透明性・データの共有・国際動向-
*山田 隆志
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抄録

化学物質の全身毒性の予測のためには、信頼性のある試験データを用いて予測モデルを構築し、どのような根拠に基づいて判断したかを確認できる透明性が重要である。そして、適切な類似性の仮説の設定に加えて、代謝やメカニズムの情報等を活用し、不確実性を減少させることが必要である。我々はこのような考えのもとで、有害性評価支援システム統合プラットフォームHESSを開発し、そのコアとなる反復投与毒性試験データをOECD QSAR Toolboxへ提供するとともに、国内外諸機関とデータ共有を行ってきた。現在は食品安全委員会から公開されている食品健康影響評価書の毒性試験結果のデータベース化に取り組んでいる。海外でも毒性データベースの開発が精力的に進められている。欧州食品安全機関EFSAは、安全性評価に用いた毒性試験結果をOpenFoodToxと名付けたデータベースとして今春公開し、香料や農薬の再評価の効率化やインシリコモデルの開発促進に役立てることを目指している。また、米国環境保護庁USEPAは、全身毒性のデータベースToxRef DBについて、データを大幅に更新したバージョンを公開することになっている。医薬品分野では、欧州革新的医薬品イニシアティブIMIの傘下において、製薬企業、学術機関と中小企業との官民パートナーシップであるeTOXプロジェクトの成果物として、市販薬と開発中止薬の前臨床データからなる標準化した毒性データベースが開発された。信頼性のある毒性試験データの共有は、データベースのケミカルスペースを拡大し、毒性予測モデルの構築・改良のために有用である。そして、製品開発プロセスの効率化や実験動物の使用の削減に貢献し、行政における安全性評価の高度化に寄与することが期待される。

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© 2017 日本毒性学会
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