日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-43
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優秀研究発表 ポスター
超音波発声を用いたラット多幸感検出系の薬物依存性評価法への応用
*田中 海里山浦 優栗原 博司白川 誉史竹内 健一郎奈良岡 準
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抄録

 多幸感(Euphoria)とは精神的な幸福感のことであり,薬物(化学物質)の中には摂取することにより,臨床で多幸感および陶酔感を発現させるものがある。その結果,再び薬物を接種したいという精神的な欲求が生じ,薬物依存に陥ることが報告されている。医薬品の開発においては,臨床試験で多幸感が認められ,依存性薬物として分類されている場合がある。しかしながら臨床で多幸感が認められている依存性薬物において,非臨床での自己投与試験では依存性の懸念が検出されていないケースも報告されている。そこで今回,非臨床での多幸感検出により,従来評価できなかった薬物依存性を捉えることができるのではないかと考えた。

 ラットの多幸感は「快」の情動として,50kHz付近の超音波領域の発声数で評価できることが知られている。また,多幸感により強い精神依存作用を引き起こすアンフェタミン投与では,発声数の有意な増加を示すことが報告されている。本研究では,ラットの超音波発声と多幸感の関係に着目し,ラットの超音波発声数が薬物依存性評価に応用できるか否かを検討した。

 我々はまず,発声回数の個体差,日差および日間差など基礎的な情報を採取するため,動物音響解析ソフトウェアであるUltraSoundGateシステム(Avisoft社)を用いて,7週齢雄のSDラットの超音波発声を測定した。次に,精神依存作用を持つ薬剤投与によりラット超音波発声の回数が増加するか評価するため,基礎データ採取の結果より決定した測定条件のもと,コカインを10mg/kgで腹腔内単回投与した際のラット超音波発声の回数を検討した。本発表では,コカイン投与試験の結果を踏まえ,本評価系の有用性について報告する。

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© 2018 日本毒性学会
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