日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-1
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一般演題 口演
カドミウム腎毒性におけるBIRC3発現抑制を介した多様な細胞死経路
*李 辰竜徳本 真紀佐藤 雅彦
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抄録

【目的】カドミウム(Cd)は、慢性曝露によって重篤な腎毒性が引き起こされる。特に、Cdの腎毒性には様々な遺伝子の発現破綻による腎近位尿細管細胞障害が深く関与している。しかしながら、Cd毒性発現における転写因子からその下流因子までの一連の経路はほとんど明らかにされていない。我々は、ARNT転写因子の制御を受けるBIRC3(アポトーシス抑制因子)の発現低下が、Cdによる腎近位尿細管上皮細胞(HK-2細胞)におけるCd毒性発現に関わることを見いだした。BIRC3は、アポトーシス抑制とともにネクロプトーシス抑制にも深く関与していることが知られている。そこで今回、Cd毒性発現におけるBIRC3を介したアポトーシスおよびネクロプトーシス誘導作用を検討した。

【方法】HK-2細胞をCdで様々な条件で処理した後、細胞毒性の指標としてMTTアッセイおよびLDHアッセイを、アポトーシス指標としてTUNEL染色を行った。さらに、Cd処理を行った細胞培養液を回収し、細胞外に放出されたHMGB-1をELISA法により測定し、ネクロプトーシスの指標とした。また、カスパーゼ3の活性化およびRIPK1のリン酸化をウェスタンブロット法により解析した。

【結果および考察】Cd処理による細胞毒性が出現した条件下で、アポトーシス誘導およびHMGB-1の細胞外放出が認められた。BIRC3のノックダウンによる細胞生存率の低下、アポトーシスおよびネクロプトーシスの誘導も認められた。さらに、Cd処理およびBIRC3ノックダウンによってアポトーシス経路の上流であるカスパーセ3の活性化並びにネクロプトーシス経路の上流であるRIPK1のリン酸化が検出された。以上の結果より、Cdは腎近位尿細管上皮細胞において、BIRC3の遺伝子発現を抑制し、アポトーシスおよびネクロプトーシスを介して細胞毒性を引き起こすことが示唆された。

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