ヒトiPS細胞由来肝細胞は同一ロットの安定した供給や遺伝子多型を考慮した評価パネルの構築が可能であることから、創薬研究応用に向けた期待度は高いが、機能面で未成熟である点が大きな課題である。その課題の克服の一つに、肝臓の微小環境を再現することが挙げられる。ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム培養系検討チーム(CSAHi-3D)ではこれまで、ヒトiPS細胞由来肝細胞の機能向上を目指し、新規培養系を模索する活動を行ってきた。2017年には細胞積層法を用いた予備的な検討試験を実施し、その結果を本学会において発表した(第44回日本毒性学会学術年会)。今回我々は、予備検討結果から3次元培養モデル器材としてCell-able(東洋合成工業株式会社)を選択し、市販のヒトiPS細胞由来肝細胞を用いた、DILI化合物の毒性評価を実施した。また、施設間差による影響も検討した。
iCell-Hepatocytes 2.0(富士フイルム和光純薬株式会社)を解凍・播種し数日間前培養した後、一旦剥離・回収し、Cell-ableに播種した。1週間の前培養の後、既知のDILI化合物(Amiodarone, Fialuridine, Flutamide, Troglitazone)およびNon-DILI化合物(Aspirin, Rosiglitazone)を1週間曝露した。2~3日間に1回培地交換し、回収した培地を用いて上清中に漏出したLDHを測定した。また、曝露後に細胞内ATPの測定を行った。同時に、2次元培養細胞との比較も実施した。
本発表では上記評価結果から、培養系の変更による、ヒトiPS細胞由来肝細胞の毒性感受性への影響について考察する。また、多施設評価を行う中で顕在化した3次元培養系特有の課題についても議論したい。