軟寒天コロニー形成試験法は、軟寒天培地中で正常細胞は増殖せず、足場非依存性の悪性形質転換細胞は増殖してコロニーを形成する性質を利用して確立された手法であり、形質転換細胞のスクリーニングや抗がん剤感受性スクリーニングの用途で広く用いられている。一方、近年開発が進む再生医療等製品のうち、特に細胞加工物は、培養・加工途中での予期しない形質転換による造腫瘍性の獲得が懸念されている。「再生医療等製品(ヒト細胞加工製品)の品質、非臨床試験及び臨床試験の実施に関する技術的ガイダンス」あるいは「ヒト細胞加工製品の未分化多能性幹細胞・形質転換細胞検出試験、造腫瘍性試験及び遺伝的安定性評価に関する留意点(案)」ではヒト細胞加工製品の造腫瘍性試験として、免疫不全動物を用いたin vivo 造腫瘍性試験と並び、in vitro造腫瘍性試験として軟寒天コロニー形成試験法が記載されている。しかし、軟寒天コロニー形成試験法を細胞加工品の評価に使用する目的で詳細を検証した事例はない。
今回我々は、悪性形質転換細胞の陽性対照細胞にHeLa細胞、正常細胞には間葉系幹細胞を用い、軟寒天コロニー形成試験法の感度を検証した。培養は30日間で行い、検出は目視及び顕微下の観察とした。感度検証の結果、106細胞の間葉系幹細胞中に含まれる5細胞のHeLa細胞及び、6×106細胞の間葉系幹細胞中に含まれる6細胞のHeLa細胞を再現性よく検出することが可能であった。さらに、複数種類の株化細胞を用いて軟寒天コロニー形成試験を行い、細胞種の違いによるコロニー形成能の違い、コロニーの形態の違いを評価した。