日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-32E
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ポスターセッション
配向性ファイバーデバイスによるヒトiPS細胞由来ニューロンの成熟促進
*小田原 あおい松田 直毅石橋 勇人堀 晃輔遠井 紀江饗庭 一博鈴木 郁郎
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抄録

 ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いた微小電極アレイ(MEA)アッセイ系は、薬剤の神経毒性予測と薬効メカニズムの解析に有用である。しかし、ヒトiPS細胞由来神経細胞が機能的に成熟するためには長期培養を必要とすることや、iPS細胞由来神経細胞が培養中にMEAプローブ上で凝集を形成し剥離する現象が発生することで、計測が出来なくなることが問題となっている。さらに、薬効評価のためのパラメータとして、新規な評価項目も求められている。これらの解決を目指し、配向性ファイバーデバイス上で培養されたiPS細胞由来神経細胞(神経デバイス)を開発しMEA測定方法を確立した。

 配向性ファイバーデバイス上でヒトiPS細胞由来神経細胞を培養したところ、細胞の凝集や剥離は培養期間中に発生することはなかった。神経デバイスをMEAプレート(アルファメッドサイエンティフィック社)にMEA測定の間だけ設置することで細胞外電位が測定可能であり、培養3週間目から明確な自発発火が検出できた。神経デバイスでは従来法である2D培養と比べて、発火頻度が高くなり、同期バーストも1週間以上早期に観察することができた。培養6週間目にpicrotoxin、4-aminopyridine (4-AP)、そしてpilocarpine の薬物応答評価を実施した。同期バースト発火パターンの変化は予想通りであり、足場による薬物応答への影響はなかった。また、神経デバイスではiPS細胞由来神経細胞がファイバーに沿ったことよって、伝導速度と伝達速度を含む神経伝播速度の計測が容易になった。痙攣誘発薬剤処理によって神経伝播速度は上昇した。

 これらの結果は、神経デバイスによって、ヒトiPS細胞由来神経細胞の成熟が促進されること、また神経ネットワーク内で神経伝播速度を基にした薬効評価を行うことが可能であることを示している。

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© 2019 日本毒性学会
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