【背景】近年、都市部の河川において MRI 造影剤に使用されている希土類元素ガドリニウム(Gd)の濃度が増加している。しかし、Gd および Gd 含有医薬品の水生生物に対する毒性は明らかとなっていない。我々は先行研究において、Gd や Gd 含有医薬品がアフリカツメガエル肝由来 A8 細胞で特徴的な遺伝子発現変動パターンを示すことを見いだした。特に芳香族炭化水素受容体(AhR)標的遺伝子である CYP1A7 と男性ホルモン受容体の発現増加が観察されたことから、内分泌攪乱作用を持つ可能性が示唆された。本研究では、これら機構を明らかとするために、種々転写因子のモニタリング細胞を作成し、Gd 含有医薬品が及ぼす影響を評価した。【方法】アフリカツメガエル肝由来 A8 細胞に対して、転写因子である NF-κB、p53、AP-1 および AhR の結合配列を含むルシフェラーゼレポータープラスミドをそれぞれ安定導入した細胞を作製した。これら細胞に対して、GdCl₂および Gd 含有医薬品(Gd-DOTA、Gd-DTPA および Gd-DTPA-BMA)を最高濃度 100 µM で 6 時間処理した。処理後、各転写因子の活性化をルシフェラーゼアッセイにより評価した。
【結果および考察】GdCl₂、Gd 含有医薬品はいずれも調べた転写因子を活性化しなかった。既知の AhR 活性化物質である 3-methylcholanthrene(MC)による顕著な AhR 活性化が認められたことから、GdCl₂及び Gd 含有医薬品は AhR を活性化せずに CYP1A7 遺伝子を誘導している可能性が示唆された。現在、アンドロゲンやエストロゲン、甲状腺ホルモンなどのモニタリング細胞の作成を進めている。また、サンプリングした環境水がこれら転写因子の活性化に及ぼす影響についても評価している。学会では、これらの結果と合わせて紹介したい。