日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-82S
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ポスターセッション
雄性hL-FABP Tg マウスにおける食餌性NASH様病態と背景メカニズム
*龍 完次朗美谷島 克宏張 舜恵山口 彩音日高 佳穂大畑 敬一宇野 絹子煙山 紀子小川 秀治渡邊 厚中江 大
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抄録

【目的】NASHの診断に関しては、非侵襲性で定量的なバイオマーカーの実用化が期待されている。一方、血液中の肝臓型脂肪酸結合タンパク質(L-FABP)は、ヒトの薬剤性肝障害やNAFLD/NASHの疾患マーカーとなり得ると報告され、注目されている。本研究では、雄性ヒトL-FABP染色体遺伝子導入マウス(hL-FABP transgenic(Tg)マウス)を用いて食餌誘発性NASH様病態の解析を行った。

【材料及び方法】実験は、7週齢雄性のhL-FABP Tgマウスと対照のC57BL/6マウスに、基礎飼料(CE-2)とコリン欠乏メチオニン低減高脂肪アミノ酸(CDAA-HF)食を自由摂取させた。給餌期間は2及び13週間とし、両期間終了時には解剖し、血液及び肝臓を採取し、血清生化学的及び病理組織学的解析を実施した。

【結果】CDAA-HF食群においては、両系統とも血清中ALT活性が2週間で上昇し、13週間でやや低下した。この変化は、Tgマウスより、対照動物で顕著であった。血清中AST活性も同様に2週間で上昇したが、対照動物のみ13週間で低下傾向を示した。一方、CDAA-HF食群の肝においては、2週間から顕著な脂肪化、軽度の肝細胞肥大、炎症及び線維化を観察し、13週間でその程度が増悪した。このうち、線維化は、Tgマウスがより顕著であった。

【結論】ヒトL-FABPの遺伝子を導入したTgマウスにおいては、対照動物と同様にCDAA-HF食によってNASH様病態が誘発されたが、対照動物に比べて肝細胞傷害が減弱し、線維化が増悪した。以上の結果より、L-FABPは、バイオマーカーにとどまらず、マウスの食餌性NASH様病態の背景メカニズムになんらかの役割を果たすものと示唆された。

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