【目的】Sterol regulatory element-binding proteins(SREBPs)は、脂質合成を司る転写因子で、過剰な活性化により肥満や脂質代謝異常を促進する。本研究は、SREBPsが代謝調節だけでなく、小胞体ストレスや慢性炎症にも関与することを明らかにする目的で行った。
【方法】In vitro実験は、HepG2細胞またはHEP293細胞を用い、thapsigarginにより誘導される小胞体ストレスや、SREBPs遺伝子の発現制御が及ぼす影響を、real time-PCRや、RNA-Seq.により解析した。In vivo実験は、改変コリン欠乏メチオニン低減アミノ酸(mCDAA)食によりC57BL6系雄性マウスに非アルコール性脂肪肝炎(NASH)様病態を誘発し、RNA-Seq.により抽出された遺伝子とその産物の肝での発現を解析した。
【結果】HepG2細胞において、SREBP-1ノックダウンは、小胞体ストレスメディエータであるCHOPの発現を減弱し、小胞体ストレス誘導後に行ったRNA-Seq.でIL-21Rの発現減弱を抽出した。IL-21Rは、小胞体ストレス時に誘導され、SREBP-1ノックダウンにおいて誘導が抑えられた。HEK293細胞において、SREBP-1a・SREBP-2を過剰発現は、IL-21Rの発現を増強した。また、改変CDAA食によりNASH様病態を誘発したマウスにおいては、肝のIL-21R遺伝子の発現が増強し、産物蛋白が肝細胞に発現した。
【考察】SREBP-1は、脂質代謝と別に、小胞体ストレスや慢性炎症に関与することが判明した。また、本研究によってSREBP-1またはSREBP-2によって制御される新規小胞体ストレス関連因子候補として同定されたIL-21Rは、NASH様病態に何らかの役割を果たしているものと示唆された。