日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S4-2
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シンポジウム 4
がん患者に起こる心機能障害発現メカニズムの解明:腫瘍循環器学の観点から
*野中 美希上野 晋上園 保仁
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抄録

 国立がん研究センターがん対策情報センターによると、日本人の2人に1人が生涯でがんに罹患するといわれている。しかしながら、不治の病と恐れられていたがんは、今や新薬の開発および多種多様な治療が選択でき、治療可能な疾患となっており、がんサバイバーは年々増加している。その一方で治療中、治療後に、副作用など様々な問題を抱えるがんサバイバーも増加しており、今まで顕在化していなかった抗がん剤による晩期性障害や、がん自身によって起こる心機能障害が問題となっている。抗がん剤や分子標的薬の中にも副作用として心毒性を生じるものがあり、このような副作用は抗がん剤治療の継続を制限するのみならず、患者のQOLを著しく低下させる。また、進行がん患者の約80%に出現し、がん死因の約20%を占めるとされるがん悪液質においても心機能障害を発症することが報告されている。当研究分野では、ヒト胃がん細胞株85As2をマウスに移植することで、摂食量低下、体重減少、筋肉量減少を伴う除脂肪量低下など、ヒトに類似した症状を呈するがん悪液質モデルマウスを確立した。これまでの研究において、同モデルはがん悪液質の進行とともに顕著な心重量の低下、ならびに心機能の低下が起こることを見出している。この85As2誘発がん悪液質モデルは、ヒトがん悪液質患者に類似した心機能低下の徴候を有していることから、がん悪液質における心機能低下のメカニズムの解析に適切なモデルであると考えている。本シンポジウムでは、同がん悪液質モデルマウスにおける心機能障害の病態生理の実験結果を報告する。さらに運動療法が慢性心不全の治療法として知られていることから、がん悪液質が誘発する心機能障害に対する治療への運動療法の応用可能性を検討することを目的とした、がん悪液質モデルマウスに対する運動負荷の効果についても合わせて報告する。

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