日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S4-3
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シンポジウム 4
心毒性の男女差
*黒川 洵子坂本 多穗
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抄録

 多くの疾患の発症・病態・治療に性差があることが明らかとなってきており、生物医学研究では、早急な対応が求められている。性差の分子機構といえば、多くの場合、性ホルモン、特にエストロゲンやアンドロゲンによって説明されるものの、その分子機構には未だ多くの不明な点を残す。また、最近になって、細胞レベルであっても性染色体の違いによって、増殖効率や刺激応答性に違いがあるという報告がなされ、そのメカニズム解明にも注目が集まっている。このように、性差医学研究は、臨床から基礎研究に新たな拡がりをみせている。

 創薬研究分野では、2001年の米国連邦監査調査において、市場から撤退した薬剤の8割で、男性に比べ女性に対する有害事象発生率が有意に高いことが示された。この報告を契機に、薬物反応の個人差を決定づける因子として「性差」がクローズアップされ、現在ではすべての治験で性差が考慮される。2015年6月には、ヒトおよびほ乳類を用いた全ての研究計画において、性による結果の違いの可能性を議論することをNIHグラント申請の要件とする声明 (NOT-OD-15-103) が発出された。つまり、基礎医学研究においても性差を考慮すべきという強いメッセージである。2016年施行の際には、米国の各大学グラントオフィスは対応に追われたと聞く。

 我々は、不整脈疾患の発症率における男女差に着目した研究を行ってきた。薬剤の副作用として発症する致死性不整脈では、女性での発症率が高いことが特徴である。我々は、この発症性差には、NOを介した心筋細胞の性ホルモンシグナルが関与していることを示した。これらの結果を如何にして生体反応における解釈に反映させるか、我々が行っている独自の取り組みを紹介したい。

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